W杯で史上最年少での総合優勝を果たしたスキージャンプ選手の高梨沙羅さん(16才)。北海道上川町出身の沙羅さんは、8才でジャンプを始める以前の4才からバレエを習っていた。板谷敏枝バレエ研究所の板谷敏枝さんがこう振り返る。
「お母さんが昔、ダンスをなさっていたようで、バレエにとても熱心だったようです。私は旭川でバレエを教えていたんですが、上川町で習えないかと、お母さんから依頼があったんです」
今は上川町と旭川、帯広に教室を持ち、教えている板谷さん。そのきっかけを作ったのは母・千景さん(46才)だったのだ。
「沙羅ちゃんはすべてが最初からできたわけではありません。今でこそ体が柔らかいですが、バレエを始めた頃はとても硬かったですし、バレエシューズを履いて踊るのが苦手でした。しかし、沙羅ちゃんは自分ができないことがとても嫌で、黙々と努力を重ねていました。毎週どんどん体が柔らかくなっていきましたし、シューズで踊っていても、一度も『痛い』と言ったことがなかったです」(板谷さん)
沙羅さんが「お姉さん的な存在」と慕う日本における女子ジャンプのパイオニア・山田いずみさん(34才)は「バランス感覚と柔軟性」が沙羅さんの強さの秘密だと語るが、実はそれはバレエで培われたものだったのだ。
「沙羅ちゃんのご両親は当初、沙羅ちゃんにはジャンプをやらせたくなかったようです。小学校高学年の頃、お母さんが『沙羅には本当は、ジャンプではなくバレエをやらせたい』と言っていたのを何回も聞いています。お父さんはジャンプの世界の厳しさを知っているからそう思うのでしょうし、お母さんは自分の好きなバレエをやってほしかったのだと思います」(前出・板谷さん)
中学に入ると、国内大会で優勝するなど、ジャンプで頭角を表した沙羅さん。しかし、両親のバレエへの思いも知っているからだろうか、ジャンプの練習が忙しくなって、中学2年生を最後にバレエができなくなった後も、板谷バレエ研究所に籍を置いたままだ。
※女性セブン2013年3月14日号