多額のお布施をめぐる金銭トラブルをはじめ宗教団体が抱える「事件」は多種多様である。そこにも新たな傾向が見え始めているという。
新宗教に入信した家族を奪還しようとして、宗教団体とトラブルになるケースはこれまでにも数多く見られた。最近は、その入信者がどんどん低年齢化する傾向があるという。 宗教学が専門で新宗教に詳しい川島堅二・恵泉女学園大学学長はこう語る。
「ある新宗教の場合は、学校帰りにコーヒーチェーン店などで勉強している中高生を勧誘のターゲットにしています。信者は大学生だと自己紹介したうえで、スポーツサークルへの参加を誘います。
最初は週1回行く程度だったものが週2~3回になり、だんだん生徒の発言が、“生涯の目的を見つけた”とか“愛することを学んだ”などと宗教色を帯びるころになって初めて親が気付く場合がほとんどです。その頃には生徒自身がすっかり心酔してしまっていることも多く、取り戻そうとする親とトラブルになるケースがある」
かつてのオウム真理教や代表による信者への性的暴行で社会問題化したキリスト教系新宗教団体・摂理などは、大学で活発に勧誘を行なったことが知られている。危機意識を持った大学側は、2009年に「全国カルト対策大学ネットワーク」を発足させた。教職員や弁護士らが参加して新宗教について情報交換し、校内での勧誘活動などを監視してきた。現在は全大学の2割にあたる約150大学が参加している。新宗教側は大学での勧誘がしにくくなり、ターゲットを中高生に移していることが「低年齢化」の背景にあるという。
※SAPIO2013年3月号