国内

街の靴修理店が好調 原価3割弱なので投資効率高いと専門家

 靴は修理して長く履く時代へ――。いま、靴修理の専門店が注目を集めている。駅や街中には靴修理の専門店が増えつつあり、レストランと見まごう洒落た店舗も登場。業界大手が自宅への宅配修理サービスを打ち出すなど、足元をめぐる戦いが熱い。

 年商67億、駅構内を中心に全国で約300店舗を展開する、靴修理サービス大手の「ミスターミニット」は、昨年から、インターネットで靴修理の注文を受けるサービスを始めた。佐川急便と提携した「楽リぺ」と呼ばれるサービスだ。配送員が靴を回収後、最短で2日後に、利用客の元に届ける。送料を含めた利用金額は、店舗料金と同程度に設定されており、男性用ビジネス靴の前底修理が2750円、女性用パンプスのかかと修理で1380円。現在は1都3県での限定サービスだが、2015年までに全国展開するという。

 駅の「ミスターミニット」に対し、主に街中で攻勢をかけるのが「靴専科」だ。家事代行やハウスクリーニングなどを手掛ける長谷川ホールディングスが展開するフランチャイズ店で、商店街などを中心に出店。街の修理屋さんを謳う。

 大規模展開を行う店ばかりではない。価格は上がるが、職人技や高級感を打ち出した専門店も人気だ。日本橋に店を構える老舗靴修理店「オレンジヒール」は、昨年オープンした東京・渋谷のヒカリエに3店舗目となる「ORANGE HEAL f.」(オレンジヒール・フェミナ)を出店した。オープンキッチンスタイルが評判の「アルカ・シューキッチン」は、東京初進出となる3店舗目を、同じく昨年、伊勢丹新宿店にオープンしている。

 修理店が提供するサービスも多様化している。前出「オレンジヒール」を愛用するという50代男性は語る。

「僕は修理ではなく、ビンテージスチールや皮によるつま先の補強や、防水を含めた靴磨きを新品時から依頼しています。好きな靴を綺麗に長く履くためですね」

 同店の女性客には、靴底にラバーを貼るサービスが人気だという。

「クリスチャン・ルブタン(婦人靴の高級ブランド)を買ったときは、そのまま修理店に直行します」(40代OL)

 健康と同じく、靴も“予防”や“維持”に重点に置かれるなど、ニーズの多様化が伺える。

 とはいえ、靴業界全体が明るいわけではない。靴・履物小売市場は2007年度から5年連続で減少(矢野経済研究所調べ)。そんななか、なぜ修理は好調なのか。船井総合研究所上席コンサルタントの梶野順弘氏に聞いた。

「まず靴業界は、チヨダやABCマートなど、大手企業の寡占状態にあるため、中小専門店や新規参入組は、“空白マーケット”を狙わざるを得ません。その際、重要なのは、初期投資が少なくて済むこと。修理店は、5坪ほどのスペースがあれば開店でき、粗利が高い。

 一般に靴の販売の粗利は、高くて40%程度ですが、修理は70~80%程度。投資効率がいいんですね。さらに、好調な店は、“一点突破”で成功しています。例えばミスターミニットは、顧客を通勤途中のビジネスマンやOLさんに絞っている。そのため駅に出店し、“早さ”を売りにしている。そして早いから、単価は安くても回転率を上げられるのです。

 いま、回転率を上げることで成功している店は他にもあります。新橋などで増えている立ち食い寿司店や、行列ができる店として話題の『俺のイタリアン』なども同じ仕組みです」

 さらに、職人の人材確保もポイントだったと梶野氏は指摘する。

「街の小規模な靴屋などが潰れて、職人さんの行き場がなくなっていた。彼らを修理店が囲い込んだのです。職人さんにとっても、技術を発揮する場ができました。また、長引く不況によるリストラで発生していた余剰人員を、適正な価格で囲い込むこともできた。その多くが、手に職をつけたいという願望を持っていたからですね」

 価値観の変化も、靴修理店を後押ししているようだ。「大量消費・大量生産の時代は終わり、良いものを長く大事に使いたいと考える人が増えてきました」と、梶野氏。靴を長く履く新しい文化の定着とともに、今後、靴修理店をめぐる競争は激化していきそうだ。

トピックス

10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン