中国はコネ社会といわれるが、それが故に不透明な取引が生まれやすいのもまた事実だろう。中国の情勢に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏がレポートする。
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2月25日、中国社会科学院が発表した〈法治藍皮書〉(法制度に関する青書)が一部の政界関係者や官僚、知識人の間で話題となっている。
青書の目玉は、現在公職に就いている者の親族が行う営利活動に関して社会科学院が実質した聞き取り調査の結果が記されていることだ。
調査結果によれば、公職に就いている者の親族の営利活動状況の公開について、公務員も一般の人々もともに60%以上が「公開すべき」と答え、同じともに5割以上の人が「公職に就く者の親族は営利活動を止めるべき」と回答したという。
面白いのは「公職に就いている者やその親族が違法に得た利益」について問われた項目である。「国庫に入れるべきか」という問いに対して、公務員の約2割が賛成しているのに対して、反対は35%だったという。
公務員の抵抗の強さが示された結果と見ることもできるが、そもそも「違法に得た利益」を「国庫に入れるべきか」という設問自体にも中国らしさがあふれていて興味深い。
それにしても、社会科学院もなかなか意地の悪い調査をするものだと考えさせられたのは以下の調査だ。判明したのは政府が買い入れる物品の値段である。結果、政府が買い入れる物品の約8割が市場価格より高く買われていることがわかった。
この結果が意味しているのは当然のこと汚職の蔓延である。政府が高く買い取った分は、賄賂として購入を決済する担当者に還元されているという構図だからだ。
それにしても大胆なのは、その内訳である。
全体の56%が市場価格の1.5倍、17%が1.5倍から2倍、5.2%が2倍から3倍、1.5%が3倍以上というのだ。まさに官僚と業者が儲かって国庫を痛めるという典型的な癒着ぶりが表れた結果となっている。
ただ、こうした事情が指摘されるのは今回が初めてではない。むしろ定期的になされていて、研究機関だけでなくメディアの独自調査でも度々触れられてきた問題だ。
今回の青書を担当した李林社会科学院放学研究所所長は、「本来監督すべき立場の権力を誰が監督するのかという問題だ」と地元メディアのインタビューに答えている。それでも現状、公務員が接待を受けたり高価な贈り物をもらうことを禁じた明確な規定はないというのだから、闇は深いといわざるをえない。