2月13日、建設会社役員のX氏が大阪府警捜査4課に逮捕された。X氏は2011年4月、大阪市内在住の知人男性に対し、X氏の建設会社が作るプレハブ住宅が大震災の仮設住宅に採用されたという経産相名義の偽造文書を提示。「(事業のための)資金を貸してほしい」と知人に持ちかけて、2500万円を騙し取った詐欺の容疑だ。
普段であれば、ほとんどニュースになりそうもない、ありがちな詐欺事件。しかし、X氏の逮捕の約3か月前に、『週刊文春』がX氏のことを石破茂・自民党幹事長の“黒すぎるタニマチ”として報じていたため、一気に政治スキャンダル化した。大阪府警関係者がいう。
「Xは30代の時に広域指定暴力団の組員とともに逮捕された前歴がある。今でも繋がりが深いと見られているので、暴力団の組織犯罪を担当する府警4課としては暴力団へも捜査の手を延ばしたい。同時に、Xは石破氏に近い他の自民党の政治家にも太いパイプがあるので、彼らとの関係も洗っている」
石破氏周辺の議員にも捜査の手が拡がっているというのである。自民党関係者はこう訝しむ。
「逮捕容疑となった詐欺事件は2年も前のこと。それが、なぜこの時期の逮捕になったのか。週刊誌で石破幹事長との関係が報じられた直後の逮捕で、話題になることを見計らったかのようなタイミングだ」
それだけではない。自民党の有力議員がらみで、もう1つ違和感を覚える事件が起きている。神奈川県警横須賀署が2月17日、ホストクラブを無許可で営業した風営法違反の疑いで、飲食店経営者のY氏を現行犯逮捕した事件である。
Y氏は小泉純一郎元首相の甥で、党の若手のホープである小泉進次郎・自民党青年局長のいとこだったことから、永田町で大きな騒ぎになった。 捜査現場にとっては衝撃的な事件だったという。県警OBが語る。
「地元選挙区で断トツのトップ当選で、しかも政権与党で大きな影響力を持つ議員の親族を突然逮捕するというのは普通なら考えられない。風営法違反で逮捕するなら事前に内偵を進めていたはず。容疑が固まった時点で警察はまず親族の議員本人や秘書に連絡するだろうし、容疑者には『大事にしたくないから経営を改善しろ』などと何度も警告を発するのが常套だ。
逮捕によって一国の政治を左右してしまいかねないので、県警上層部や警察庁のゴーサインがでなければできない。それをあえて逮捕したということは、どういう政治判断だったのかと現場の捜査員の間で話題になっている」
しかも、容疑は風営法違反であり、普通ならば県警が声高に発表などしないような案件だ。Y氏は普段、小泉元首相や進次郎氏らとの関係を隠していたというのに、なぜ「いとこ逮捕」と騒がれてしまったのだろうか。
自民党有力議員を襲った2つのスキャンダルについて、前出の自民党関係者はこう漏らす。
「普通なら安倍自民党の足を引っ張りかねない事件だが、今回は事情が違う。石破氏も進次郎氏も自民党では非主流派で、この2つの事件は安倍官邸にとってダメージになるどころか、追い風にさえなっている」
※週刊ポスト2013年3月15日号