今年に入って実に1700回以上――箱根で地震が多発している。続く鳴動は、箱根山噴火の前ぶれなのか。
今、箱根で起きている地震は、火山性地震と呼ばれるもの。武蔵野学院大学特任教授の島村英紀さんが解説する。
「火山性地震は、下からマグマが上がってくるために、火山を形成している岩がねじれたり歪んだりすることで発生します。ごく浅いところで起きるのが特徴で、岩はあちこちでビシビシ割れますから、群発地震になるんです」
箱根の揺れが東京を含む近隣の都市まで伝わらないのは、震源がそれほど浅いからなのだ。
また、「山上がり」と呼ばれる山体膨張は、その起こり方も火山によって異なるという。九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター長の清水洋さんの話。
「山体膨張が起きて数時間後に噴火するケースもあれば、何年もかかるケースもあります。ただし、噴火が差し迫ってくると膨張の中心が非常に浅くなってくるのは共通した特徴です」
清水さんは今は噴火が差し迫った状態ではないと前置きしたうえで、こう続けた。
「この膨張がもっと浅いところに移動してきたり、噴出するガスの温度が上がる、量が増える、成分が変わるといった異常が表れ始めたら要注意です」
もし箱根山が噴火したら、どんなことが起こるのか。
「可能性がいちばん高いのは、小規模な水蒸気爆発です。マグマで熱せられた熱水、あるいはマグマから分離して出てくる火山ガスの熱によって、大量の水が水蒸気に変わり、その蒸気の圧力で、表面の地面を吹き飛ばします。比較的規模は小さく、火口から1kmや2kmの範囲には石が飛来しますが、少し離れれば大丈夫でしょう」(清水さん)
ただし、仮に3100年前の大規模な水蒸気爆発のように山容を変える噴火となれば、被害は想像を絶するものになる。清水さんが続ける。
「箱根山は雲仙岳と同様、粘り気の高い溶岩を出す火山で、溶岩ドームを作る時に火砕サージ(火山灰と空気が混じったもの)や火砕流を起こし、周囲をのみ込んでしまう。1991年の雲仙普賢岳の噴火の際に出た火砕サージは時速100km以上で、とても逃げられるものではありませんでした。箱根はホテルや別荘も多いので、もし噴火したら大変なことになる。火山灰が降って、東京も首都機能がマヒする可能性は充分あります」
※女性セブン2013年3月14日号