安倍晋三首相の前回の政権がわずか1年で崩壊した理由には、内閣を“お友達”で固めたことが指摘されている。そのため、相次ぐ閣僚のスキャンダルの対応が後手後手となり、急激に支持率を落としていった。
「有識者会議などでも自分の考えに近い人や、自分を応援してきた人を集め、“知らない人とは話したくない”という雰囲気があった」(当時の官邸スタッフ)
ところが、総理を辞めた後の安倍氏は“知らない人”との交流に積極的になった。安倍氏の政策スタッフは語る。
「アベノミクスの理論的支柱となっている浜田宏一・イェール大名誉教授と巡り会ったのは、安倍さんが総理を辞任してからのこと。父の晋太郎氏が設立した『安倍フェローシップ・プログラム』に浜田教授が参加していた縁で、“一度会ってみたらどうか”と紹介されたと聞く。
国土強靱化計画の立案者の一人で、浜田教授とともに内閣官房参与になった藤井聡・京大教授も総理辞任後の人脈。安倍さんとは距離がある自民党議員の紹介で知り合ったらしいが、今では安倍さんが直接電話をしてアドバイスをもらう関係になっている」
もちろん、前政権時代に外務次官として安倍氏を支えた谷内正太郎・内閣官房参与のような長年のブレーンとのパイプも維持しているが、「いわゆるタカ派文化人が目立った前政権のアドバイザーに比べ、イデオロギー色のない経済・金融の専門家が増えているのは間違いない」(同前)という。
“頭脳”だけでなく、“手足”にも変化があるという。自民党の三役経験者の話。
「前回は自分のいうことを聞く人物で官邸の事務方を固めたが、今回は総理首席秘書官に経産官僚の今井尚哉氏を起用するなど、実務と情報管理に長けたスタッフを配した。気心が通じるかどうかより、能力が高いかどうかを重視している点が評価できる」
※週刊ポスト2013年3月15日号