プロ野球界では、たとえ能力があったとしても、運やチーム事情で翻弄されるような状況も生じる。そのため、中には有力選手と個人的な関係を結ぶことで、存在意義を高める選手もいる。特に投手と捕手では、そうしたケースが多い。近鉄ではかつて、エース・鈴木啓示がマウンドに立つ時は、決まって有田修三がマスクを被った。当時の正捕手は梨田昌孝だった。
「たまたま鈴木が有田と組んで投げた試合で好投したので、鈴木がゲンを担いで定着してしまったんです。梨田は、“なんで鈴木の時はオレじゃないんだ”と思い、有田は有田で“どうしてオレは鈴木の時だけなんだ”と文句をいっていましたね」(在阪スポーツ紙デスク)
こうした例は数多い。巨人時代の工藤公康の登板では、村田真一ではなく村田善則が起用されたし、最近でも中日・山本昌が投げるときには正捕手・谷繁元信を押しのけて、小田幸平がマスクを被っている。
「絶対的なエースに取り入ることができれば寿命は延びる。ただ問題は、そのエースが引退やトレードでいなくなったときに、こっちまでとばっちりを受けることなんだけど(笑い)」(パ・リーグの中堅捕手)
(文中敬称略)
※週刊ポスト2013年3月15日号