民間企業の「65歳雇用延長」義務化に合わせて、公務員にも原則、希望者全員の「再任用」制度がつくられた。
エリート官僚は退官後に独立行政法人や民間企業への天下りという優雅な「第2の人生」が保障されているが、そうした特権を持てない役人は、定年退職の翌日、改めて役所からフルタイム勤務の官職に「再任用」されるのだ。もちろん、身分は65歳まで公務員のままである。
本誌がこれまで報じてきたように、民間企業の場合、雇用延長といっても60歳以降は手当やボーナスがない嘱託社員や時給制の派遣社員として再雇用され、年収200万円程度まで大幅に下がるケースが多い。しかし、公務員は再任用後の給料・待遇が民間と比べて段違いに恵まれているのだ。
人事院の資料(『国家公務員の再任用制度』)をもとに、今年4月以降に60歳の定年を迎えるノンキャリアの本省課長補佐Aさん(行政職6級。人事院のモデル年収約890万円)の再任用後の収入がいくらになるかを試算した。
まず基本給(俸給)が月額31万9100円、それに「地域手当」(東京勤務は俸給の18%)と「本府省業務調整手当」を加えた月給は約40万円。さらにボーナスが年間2.1か月分支給されるため、年収は約560万円になる。現役時代の年収ピーク時の63%に相当する金額だ。
それ以外にも、「超過勤務手当」「特殊勤務手当」「休日給」など各種手当が支給され、格安の公務員宿舎にも住み続けることができる。
しかも、この再任用制度は「暫定的」なもので、人事院が政府に提出した公務員の定年延長の意見書には、さらにバラ色の老後設計が盛り込まれている。
それによると、年金支給開始年齢の引き上げに合わせて公務員の定年を段階的に65歳まで延長し、61歳以降の給料は現役時代の7割を保証、ボーナスは3か月分支給、現在の再任用制度では支給されない扶養手当や住宅手当なども現役時代と同様に支給するとされている。そのため、前述のAさんのケースでは年収約620万円になる。
指定職と呼ばれる審議官や局長などの高級官僚は60で役職定年となるが、その後は専門職である「スタッフ職」などに異動して俸給をそれまでの73%に下げるとしている。元審議官なら年収は約1200万円、元局長は約1300万円が保証される。
これほど恵まれた定年延長なら「天下りは65歳の定年後でいい」と霞が関に“窓際高給官僚”が溢れる光景が目に浮かぶ。
※週刊ポスト2013年3月15日号