アラキドン酸――聞きなれない言葉かもしれないが、2009年に、神経新生(神経細胞の誕生)や、うつ、痴呆などの精神疾患の予防に役立つ可能性があると発表され、注目を集めた不飽和脂肪酸のひとつだ。じつはこの成分が、赤ちゃんの脳の発達にも、大きくかかわっていることがわかっている。
日本ではすでに、アラキドン酸配合の粉ミルクが発売されているが、昨年には、その配合量が母乳と同じ範囲までに近づけた粉ミルクも登場した。小児思春期発達を研究する順天堂大学大学院の主任教授・清水俊明さんは、こう解説する。
「アラキドン酸は、DHAなどと同じ脂肪酸の一種です。小児科の分野では、30年ほど前から知られていた栄養素で、『アラキドン酸が不足すると、体の成長が遅れる』とされてきました。脳神経の発達にも重要な影響を与えることがわかってきたのは、2000年頃です。
アメリカのある調査では、『アラキドン酸とDHAが配合された粉ミルクを与えられた乳児は、DHAのみ、またはどちらも入っていない粉ミルクを飲んだ乳児よりも、精神発達指標が高い』という結果が出ました。つまり、乳児の脳の発達には、アラキドン酸を充分に含んでいる母乳か粉ミルクが必要なのです」
アラキドン酸は、肉や魚、卵などに含まれている栄養素。通常の食事を摂れる大人であれば、不足することはない。また、ある粉ミルクメーカーが4200人以上の母乳を集めて分析したところ、3人に2人の母乳には、100kcalあたり、13.2~24.0mgのアラキドン酸が含まれていることがわかった。
「乳児の場合、母乳を飲んでいれば、母親が食事から摂ったアラキドン酸を充分に摂取できます。ただし、粉ミルクを利用する場合は、母乳と同等の量のアラキドン酸が含まれているものを選ぶと安心です」(清水さん)
※女性セブン2013年3月21日号