4月から「改正高年齢者雇用安定法」の施工により、希望者全員を65歳まで雇用する制度の導入が企業に義務付けられる。しかしこの制度について大前研一氏は、「むしろ定年を引き下げよ」と説いている。以下、大前氏の解説だ。
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私の提案は、定年を65歳に引き上げるのではなく、「50歳前後に引き下げる」という方法だ。こうした発想は、昨日今日思いついたものではない。私がマッキンゼー時代に導入した独自の定年制度がある。それは従来からの60歳定年制は残したまま、「年齢+勤続年数=75歳」を過ぎたら、いつでも定年退職できる、というものだ。
たとえば、あなたが23歳で会社に入り、49歳を迎えたとする。その場合、勤続年数は26年だから「49+26=75」で、めでたく正規の退職金を全額もらって定年退職できるのだ。実際、私は自分でつくったその制度を使い、50歳になった年(51歳になる前)にマッキンゼーを定年退職して第二の人生をスタートした。
日本企業も、この「大前式定年制」のようなシステムを導入し、65歳定年制とどちらかを選択できるようにすべきだと思う。たとえば50歳で辞めた人には、50歳で昇給が止まったとして65歳まで15年分の生涯給与を払ってしまうか、年金として65歳まで払い続ける。
そうすれば、50歳から他の会社に再就職して給与が半分になったとしても十分、暮らしていける。あるいは、「大前式定年制」で辞めた場合に最も多く退職金が出るようにして、それ以降、長く会社にいればいるほど退職金が減るようにする方法もあるだろう。
いずれにしても“最初の定年”を引き下げれば、日本は活性化する。なぜなら、日本は大企業が人材を抱えすぎていて、中小企業は人材が足りないからである。
また、大企業で働いていた人が早めに表に出て、それまでの経験を生かして中小企業や地方の企業に貢献したり、若い人たちと一緒に新しい会社をつくったりしたほうが、元の会社で“生ける屍”になって飼い殺し状態に甘んじるよりも、絶対に日本のためになる。また、そういう覚悟で最初の15×2=30年を過ごすほうが、若い人にとっても気合いが入るだろう。
※週刊ポスト2013年3月15日号