ビジネス

【日本株週間見通し】リーマン前水準回復もまだ出遅れ感顕著

 投資情報会社・フィスコ(担当・村瀬智一氏)が、株式市場の3月4日~3月8日の動きを振り返りつつ、3月11日~3月15日の相場見通しを解説する。

 * * *
 先週の日経平均は大幅に上昇。2008年9月のリーマン・ショック前の水準を回復した。米国では1日に歳出強制削減が発動されたが、大きな混乱はみられなかったことが安心感につながり、週明けの日経平均は昨年来高値を更新して始まった。注目された日銀総裁候補の黒田氏の所信聴取を受けて、TOPIXは2010年4月以来の1000ptを回復。

 その後は大証先物システム障害による混乱や、日銀総裁、副総裁候補の所信聴取が通過したことによる手掛かり難、週末の先物・オプション特別清算指数算出(SQ)や米雇用統計を控えていることもあり、膠着感が強まる局面もみられた。しかし、米国市場ではNYダウが5年5ヶ月ぶりに史上最高値を更新するなか、日米同時株高に。日経平均は米国株高の流れを受けたギャップ・アップが続き、連日で昨年来高値を更新した。

 インデックスに絡んだ売買では、ファーストリテイリング<9983>が週間で6000円超の上昇となり、3万円台に乗せ、一段と日経平均の影響度が高まっている。また、個人の良好な需給環境のなか、中国からの微小粒子状物質「PM2.5」関連、シェールガスや環太平洋経済連携協定(TPP)関連などへの物色も活発であり、一気に昨年来高値を更新する銘柄や数年来の高値を回復する銘柄が目立っていた。

 週末の日経平均は7営業日続伸で高値引けとなった。週末に米雇用統計の発表を控えているなかでの一段高であり、相場の先高感が窺える。NYダウが史上最高値を更新するなか、ようやくリーマン・ショック前の水準を回復してきた日本株への出遅れ感は顕著であり、パフォーマンスの観点から海外勢による資金流入は今後も継続することになろう。

 また、日銀総裁、副総裁候補の所信聴取通過でいったんは調整かとみられた。しかし、サプライズを期待していなかった7日の金融政策決定会合では、投票権を持つ審議委員から無期限緩和(オープンエンド)の前倒しなど緩和強化の提案が相次ぎ、次の総裁のもとでの一段の金融緩和が推し進められるとの見方につながった。

 為替市場では3年7ヶ月ぶりに95円台に突入するなか、今後は95~100円のレンジが意識されてくる。輸出関連企業などへは一段の業績改善期待につながろう。

 また、内閣府が発表した2012年10~12月期の国内総生産(GDP)の改定値では、伸び率は0.04%(年率0.2%)となり、3四半期ぶりにプラスに転じた。2月の景気ウオッチャー調査は、現状判断指数は53.2と4ヶ月連続で改善し、好不況の分かれ目を示す50を上回っている。市場は期待から現実の景気回復を評価する流れに。

 そのほか、金融庁が株式の空売り規制の見直しを発表。これまで市場参入を阻害していた要因が減ることによって、海外ファンドなどによる資金流入が増え、流動化が増すことが期待されてくる。そのほか、一部の日本政府当局者の間で、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)について、運用の大幅な見直しを模索する動きが出ていると報じられている。日本市場は本格的なリスクオンに向かうことになりそうだ。

 とはいえ、日経平均はテクニカル面では相当過熱感が意識されてきている。米国では雇用統計の結果のほか、連邦政府による歳出強制削減が始まるなど、経済運営に対する先行き不透明感もくすぶる。ファーストリテイリング1社による指数インパクトの影響も警戒要因ではある。決算期末が近づくことにより、機関投資家などは動きづらくなる。

 もっとも、過熱感や外部要因などを警戒している局面においては、冷静さは保たれていると考えられ、順張りスタンスでの相場展開になりそうだ。物色は相当広がりがみられているが、海外勢による資金流入が強まる局面では主要銘柄へ。膠着局面では、より出遅れている銘柄や割安感が意識される銘柄などに矛先が向かいそうである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

俳優の竹内涼真(左)の妹でタレントのたけうちほのか(右、どちらもHPより)
《竹内涼真の妹》たけうちほのか、バツイチ人気芸人との交際で激減していた「バラエティー出演」“彼氏トークNG”になった切実な理由
NEWSポストセブン
『岡田ゆい』名義で活動し脱税していた長嶋未久氏(Instagramより)
《あられもない姿で2億円荒稼ぎ》脱税で刑事告発された40歳女性コスプレイヤーは“過激配信のパイオニア” 大人向けグッズも使って連日配信
NEWSポストセブン
ご公務と日本赤十字社での仕事を両立されている愛子さま(2024年10月、東京・港区。撮影/JMPA)
愛子さまの新側近は外務省から出向した「国連とのパイプ役」 国連が皇室典範改正を勧告したタイミングで起用、不安解消のサポート役への期待
女性セブン
11月14日に弁護士を通じて勝田州彦・容疑者の最新の肉声を入手した
《公文教室の前で女児を物色した》岡山・兵庫連続女児刺殺犯「勝田州彦」が犯行当日の手口を詳細に告白【“獄中肉声”を独占入手】
週刊ポスト
チョン・ヘイン(左)と坂口健太郎(右)(写真/Getty Images)
【韓国スターの招聘に失敗】チョン・ヘインがTBS大作ドラマへの出演を辞退、企画自体が暗礁に乗り上げる危機 W主演内定の坂口健太郎も困惑
女性セブン
第2次石破内閣でデジタル兼内閣府政務官に就任した岸信千世政務官(時事通信フォト)
《入籍して激怒された》最強の世襲議員・岸信千世氏が「年上のバリキャリ美人妻」と極秘婚で地元後援会が「報告ない」と絶句
NEWSポストセブン
「●」について語った渡邊渚アナ
【大好評エッセイ連載第2回】元フジテレビ渡邊渚アナが明かす「恋も宇宙も一緒だな~と思ったりした出来事」
NEWSポストセブン
三笠宮妃百合子さま(時事通信フォト)
百合子さま逝去で“三笠宮家当主”をめぐる議論再燃か 喪主を務める彬子さまと母・信子さまと間には深い溝
女性セブン
氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン