北朝鮮の金正恩第一書記が2月28日、平壌で米プロバスケットNBAの元スター選手、デニス・ロッドマン氏とバスケットボールの試合を観戦したり、親しく歓談する映像や写真が公開された。しかし実際に金第一書記が最も訪朝を希望していたのは、「バスケットボールの神様」とも称されるスーパースターのマイケル・ジョーダン氏だった。
ロッドマン氏と一緒に訪朝した制作会社VICEの撮影チームの責任者が米CNNに明らかにした。ロッドマン氏は試合観戦の際、数千人の観客を前にして、金第一書記に「あなたは生涯の友人だ」と興奮気味に話したことが分かっているが、実は金第一書記の本当のお目当てのジョーダン氏に訪朝を断わられたことで、ロッドマン氏が平壌を訪問することになったのだ。
そのロッドマン氏も訪朝を快諾したのは「1000万ドル(約9500万円)」とも伝えられるテレビ番組の出演料が目当てで、滞在費用などは北朝鮮側が支払っているとCNNは伝えている。ロッドマン氏は昨年、離婚した妻と子どもへの養育費の未払いで告発されており、彼の弁護士は「ロッドマン氏は破産状態で、日常の生活も苦しいほどだ」と語っていた。
また、ロッドマン氏は米国帰国後、米ABCテレビに出演し、「彼(金第一書記)がオバマ大統領に望んでいることはただ一つ。電話をしてもらうこと」と発言し、「オバマ大統領に電話をかけてほしいと伝えてほしい」と頼まれたことを明かしたうえで、「彼は『戦争はしたくない』と私に言った」とし、「彼はバスケが大好きだから、私は『オバマ大統領もバスケが大好きだ』と伝えた」とロッドマン氏は述べている。
では、金第一書記はオバマ大統領から電話をもらったら、何を話し合おうとしていたのか。米紙「ニューヨーク・タイムズ」によると、オバマ大統領は昨年夏、北朝鮮に密使を送り、金第一書記宛て伝言を托した。その内容は、ミサイル発射実験や核実験をしないように釘を刺す一方で、これが守られれば関係改善の交渉に踏み切る用意があるというものだった。
しかし、金第一書記はミサイル発射実験と核実験を強行したことで、オバマ大統領との直接交渉の道を閉ざしたことになった。そして今回、ロッドマン氏に伝言を托したことで、金第一書記はいまだにオバマ大統領との対話を諦めていないことへの意思表示をしたことになる。
ちなみに、米国務省のベントレル報道部長は金第一書記の伝言について「意味がない」と一蹴し、けんもほろろの扱いだった。