保有する不動産を賃貸などで活用して事業にする「土地持ち企業」の株価が急上昇している。
新聞社向けの輪転機メーカーでありながら、保有する不動産の賃貸収入が多い東京機械製作所の株価は、2月15日の安値60円から3月4日には174円の高値をつけ、わずか2週間余りで3倍近くまで急騰。安田倉庫は2月28日の安値681円から3月5日には高値1290円と、わずか4営業日で2倍近くまで膨らむなど、もはや暴騰の域に達しているといっても過言ではない。
マネックス証券シニア・マーケットアナリストの金山敏之氏が解説するように、その理由は単純明快だ。
「金融緩和に積極的といわれる黒田東彦・アジア開発銀行総裁を日銀総裁に充てる人事案を受けて、不動産価格が先行き反転上昇するとの思惑が広がっています。そうした中、不動産を活用して事業展開する企業の含み益が拡大するという期待から『土地持ち銘柄』に買いが集中しています」
ちなみに、含み益とは取得時の簿価と現在の時価との差額を指し、取得時と比べて時価が上がるほど含み益は膨らむ。それによって企業に余力が生まれ、新たな事業展開がしやすくなるという期待感が高まっているのだ。デフレ下では含み損を膨らませる不良債権でしかなかった土地が、インフレ転換への期待で“強み”に変身したということだ。
※週刊ポスト2013年3月22日号