千葉県浦安市、高層マンションが建ち並ぶ住宅街の公園に出現した耐震性貯水槽の隆起─液状化によって発生した、この異様な光景は「首都圏の被災地」の象徴として、たびたび報じられてきた(関連記事『浦安市“被災マンホール”保存の意向に住民「見せ物かよ!」』参照)。
あれから2年、高洲中央公園の駐車場の光景が、「望まれない」モニュメントとして完成する。
そもそも隆起した貯水槽の一部の保存決定が市から発表されたのは、震災からわずか3か月後のことだった。その理由は「今後の防災対策の教訓としたい」から。しかし、これに地元住民が大反発。「天災ではなく、市のずさんな建設による人災」「忘れたい記憶をわざわざ思い出させる」などという声があがり、約4000人が反対の署名を市に提出。しかし、工事はそのまま続行された。
保存のための費用は、約150万円。隆起した部分はすでに柵で囲われていて、モニュメントとしては月内の完成が予定されている。
保存を決定した松崎秀樹市長は「震災を風化させないため」と繰り返すが、完成に伴う式典や大々的な告知の予定はなし。また、「周囲を低木や高木で覆いながら、道路から直接目に触れないよう心配りをしていきたいと思っています」(松崎市長)と主張する。
はたして目立たないモニュメントに意味はあるのか。行き交う地元住民が眉をひそめる中、工事も目立たぬようひっそりと進められている。
撮影■丹羽敏通
※週刊ポスト2013年3月22日号