2013年4月から始まる年金の支給開始年齢の引き上げ。男女で引き上げ開始時期が異なり、12年間かけて段階的に引き上げられる。年金の支給開始年齢引き上げで、多くの家庭が気を揉んでいるのは、「60才から65才までの収入をどう確保していくか」という点だ。
65才までの雇用継続を企業に義務づける「改正高年齢者雇用安定法」により、本人が希望すれば65才まで働けるようになった。
しかし、働き方は同じでも、収入が激減してしまうケースが多い。そもそも「60才以降は働きたくない」と考えている人もいるだろう。
そこで注目を集めているのが、年金をもらい始める時期を前倒しする「繰り上げ受給」だ。社会保険労務士の北村庄吾さんの解説。
「年金事務所に申請することで、1か月単位で年金をもらい始める時期を早めることができます。本来65才からの年金受給でも、最大で5年早めて60才から受け取ることが可能になります」
ただし、繰り上げ受給をすると、もらえる年金額は1か月早めるごとに0.5%下がってしまう。
例えば、61才で年金の支給が始まる人が、1年間繰り上げして60才から年金をもらい始めると金額は6%減。年金額が月20万円の場合、月18.8万円に下がってしまう。夫が59才または58才(2013年4月1日現在)の家庭は61才から年金をもらい始めることになるので、60才に繰り上げ受給した場合はこの数字がひとつの目安となるだろう。
1年間の繰り上げの場合、減額は月1万円程度にすぎないが、「62才→60才」「63才→60才」と繰り上げ幅が大きくなるほどに、年金の減額も厳しくなっていく。
「65才→60才」に繰り上げした場合、年金額は月20万円→月14万円にまで下がり、「61才→60才」の繰り上げのケースと比べると月4・8万円も少ない。
年金の総受け取り額は年間50万円以上差があり、80才までの20年間で1000万円以上の差がついてしまう。
ひとくちに繰り上げ受給といっても、1年間と5年間ではこれほど差があることを知っておくべきだろう。一般的には、繰り上げ受給は損をするといわれている。
「本来65才から支給される年金を、5年間繰り上げて60才からもらい始めた場合、76才8か月以上生きると、繰り上げ受給のほうが損することになります。日本人の平均寿命を考えると、76才8か月より長生きする可能性は高い。特別な事情がない限り、繰り上げはおすすめできません」(北村さん)
※女性セブン2013年3月21日号