中国の病院は今、大気汚染による喉や目の痛みを訴える患者でパンク寸前となっている。だが、国土の汚染は大気だけではない。拓殖大学の原嶋洋平教授(環境政策論)は水の汚染も深刻だと指摘する。
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「環境問題のデパート」と言われる中国は大気以外にもあらゆるものが汚染されている。
深刻なのは水の問題だ。「七色の川がある」などと自嘲気味に語られているが、工業廃水などで汚染されて緑や青、紫に染まった河川があちこちにある。中には鮮やかな赤の川に黄色い排水が流れ込んでいる場所もあり、浙江省では「環境保護局長がこの川で泳いだら20万元(約300万円)出す」という企業家まで現われたという。
昨年末、内陸部の山西省で化学工場から染料の原料として使われる有毒物質のアニリンが大量に漏れ出し、付近の住民の水源である河川へ流れ込む事故が起きた。報道によると、汚染の事実が公表されたのは流出から5日後であり、それまで水を利用していた住民の健康被害が心配される。
都市では地下水汚染が進行している。中国メディア『南方都市報』は118都市のうち64%で重度の地下水汚染が生じ、33%の都市で軽度な汚染があると報じている。汚染されていないのはわずか3%ということになる。
さらに、ゴミ問題がある。各国で廃棄物規制が厳しくなった結果、「リサイクル資源」が中国に集まっている。中でも「Eウェスト」と呼ばれる電気・電子製品廃棄物は希少金属を取り出した後の大部分がゴミとなる。それは適切に処理されず、野ざらしで放置されるケースが多い。他にも、内陸部では砂漠化が進み、都市部では生活ゴミの処分問題もある。
※SAPIO2013年4月号