「口パク」を受け入れないことを決めました――。音楽番組を担当する、フジテレビのきくち伸プロデューサー(51)が、3月5日に記したブログ『きくちPの音組収録日記』の内容が話題を呼んでいる。
同ブログによると、『MUSIC FAIR』のスタッフ会議で、『僕らの音楽』『堂本兄弟』同様「口パク」を受け入れない意向が決まったというが、裏を返せば、音楽番組にとって口パクは当たり前になってしまっていたということだ。
では、いったい、いつごろから歌手は生で歌わなくなったのだろうか。音楽業界関係者は、こう解説する。
「1980年代後半ごろから、口パクする歌手が増えてきたように思います。理由は『踊りながらだと息が乱れる』『音程が不安定なのでCD音源のほうがいい』といったところです」
この2つの理由を聞くと、あるアイドル歌手が思い出される。1980年代、トップを走り続けた田原俊彦(52)である。代表曲『抱きしめてTONIGHT』などで激しいダンスを魅せながらも、田原の歌唱力への評価は低かった。
「それでも、トシちゃんは口パクを頑なに拒否しましたね。口パクしたほうがダンスに専念できるし、当時は得だったと思いますよ。実際に、周りでは口パクする歌手もいたわけですし、普通の歌手なら口パクに流れてもおかしくない。『ジャングルJUNGLE』なんて、相当な運動量でしたからね。
でも、トシちゃんは信念を曲げず、歌って踊り続けた。もちろん、ウラではものすごく努力をしていますよ。それは、ジャニーズの後輩や当時の音楽番組関係者なら誰もが知るところでした。
たとえば、歌番組のリハーサルでは、本番に向けて余力を残す意味も含めて、本気で歌わない歌手もけっこういるんです。でも、トシちゃんはリハでも本番と変わらず、全力で歌って踊ってましたからね。当時は『教師びんびん物語』が大ヒットして、ものすごく忙しい時期だったから、手を抜いてもおかしくなかった。なのに、いつも一生懸命でしたね」(同前)
「“口パク排除”の風潮が高まれば、当時の田原のパフォーマンスのすごさがあらためて評価されるようになるのかもしれない」――そう前出音楽関係者は希望を語っていた。