ここ最近、全国各所で「嫌韓デモ」が行われている。一部のデモでは、あまりに激しい口調のヘイトスピーチ(人種、皮膚の色、国籍、民族など、ある属性を有する集団に対して貶めたり暴力や差別的行為を煽動するような侮辱的表現を行うこと ※龍谷大学法科大学院教授・金尚均氏による定義)や罵詈雑言の書かれたプラカードが掲げられることもある。
たとえば、2月9日に東京・新大久保で行われたデモでは日の丸や旭日旗を掲げ、「朝鮮人をガス室に送れ」というシュプレヒコールや「朝鮮人 首吊レ 毒飲メ 飛ビ降リロ」と書かれたプラカードを掲げる人が出た。2月24日に行われた大阪・鶴橋のデモは「鶴橋大虐殺をするぞ」といったコールも出た。
デモの参加者の論理としては、「数々の特権を持った在日韓国・朝鮮人によって、日本人が虐げられている」「在日韓国・朝鮮人の多くは反日の思想を持っているにもかかわらず、日本に居座り続けている。早く祖国へ帰るべきである」「少数民族である在日韓国・朝鮮人が日本の政財界やメディアを牛耳っており、多数派である日本人が虐げられている。これはまさに南アフリカのアパルトヘイトと同じ構図である」といったものがある。
しかし、この動きに反対する集会が3月14日、参議員会館で行われた。「排外・人種侮蔑デモに抗議する国会集会」と題されたこの集会は、参議員議員の有田芳生氏らが中心になって呼びかけられた。有田氏は前出のデモを「異常」と2月26日にツイッターで発言し、国会でもこの問題を取り上げることを表明しており、それが実行される形となった。
会の冒頭で有田氏は「放っておけばよい、という声もあるが、看過できない状態になっている」「『殺せ』などの発言は表現の自由の一線を超えた」などと、集会を呼びかけた理由を解説。その後、これらのデモに詳しいジャーナリストの安田浩一氏による基調報告や、弁護士の上瀧浩子氏や前出の金氏によるヘイトスピーチに対する法律的解釈も議論された。
そして、デモの映像を観たという右翼団体・一水会最高顧問の鈴木邦男氏は「映像を見て非常に悲しくなりました。日の丸の旗が可哀想だと思いました。日の丸は日本の優しさ、大和の国の寛容さを表すもの。それが排外主義的なものに使われている。日の丸が泣いていました。血の涙を流していました」と愛国者の立場からの疑問も呈された。
会の最後には「集会宣言」が行われ、「私たちは韓国や北朝鮮との間の国際問題を原則に基づいて解決をはかっていく。しかし在日韓国・朝鮮人などを差別し侮蔑する行為は、公共の平穏を乱し、人間の尊厳を傷つけるもので、決して許されるものではない。私たち集会参加者は、排外主義、レイシズム(人種差別)の広まりを押しとどめる意志をここに表明し、これからも行動していく」と締めくくられた。