「つなげよう、日本。」
ポスターに大きく掲げられたキャッチフレーズを駅で見かけた人も多いだろう。2年前の東日本大震災は、東北の人々の生活はもちろん、「つながっている」ことが当たり前だった鉄道にも甚大な被害を与えた。その爪痕はいまだ残っている。
日本の鉄道会社の中で最大規模を誇るJR東日本は、2011年3月11日を国鉄改革に次ぐ「第二の出発点」と位置づけた。社会インフラとしてはもちろん、日本を代表する企業として、同社はどんな未来へレールをつなげようとしているのか。
2年前の大地震と大津波により、JR東日本では23駅が流失。さらに線路の流失など1700か所以上が損傷を受ける甚大な被害が出た。
北リアス線、南リアス線を運営する第三セクターの三陸鉄道は、国の援助を受け、2014年の全面運行再開を目指して動き出している。それに対し、さらに被災範囲の広いJR東日本では、再開の目途さえ立たない路線も多い。
というのも、JR東日本は黒字の民間企業であり、三陸鉄道のように鉄道軌道整備法などによる公的な支援が受けられないからだ。特例措置がない限り、復旧費用は全額自己負担しなければならない。
被災した線路をただ元の状態に戻すだけでも、「1000億円以上を要する」(同社幹部)。安全を確保するため高台に移設すれば、費用はさらに膨らむ。しかも福島、宮城、岩手の沿岸部を走る路線は、もともと赤字。仮に復旧させても黒字に転換するのは厳しく、経営判断は難しい。
※SAPIO2013年4月号