東京・銀座8丁目にある立ち飲み、立ち食いスタイルのレストラン『俺のイタリアンJAZZ』。『俺のフレンチ(俺フレ)』『俺のイタリアン(俺イタ)』など、全ての店名に「俺の」を冠して話題沸騰中の系列店の中でも、今年2月14日にオープンしたばかりという最も新しい店だ。『俺フレ』『俺イタ』の売りは、高級店と見まがうメニューが、1000円程度の安い価格で食べられること。
開店する午後4時の30分前というのに、すでに30人超が行列をなしている。それにしても、気になるのはどうしてこんなに安いのかということ。
その理由のひとつは回転率の良さにある。通常の高級フレンチやイタリアンならば、お客さんは一晩に、ひとテーブル1組の1回転が普通。しかし、『俺フレ』『俺イタ』では、立ち飲み席をメインにした2時間制にすることで、3~5回転する。
俺の社長の坂本孝さんが言う。
「うちは3回転以上お客様が回らないと赤字になってしまう超薄利戦略です。したがって、銀座など人口過密地帯でないと経営は厳しいんです」
もうひとつは仕入れ方法にあるのだという。話をしてくれたのは、『俺のイタリアン』の立ち上げからかかわり、“ミスター俺イタ”の異名を持つ山浦敏宏シェフだ。
「仕入れをグループの店舗全体で行うことで、材料費を安くすることができます。例えば、1店舗で15個のフォアグラを使うとすれば、10店舗で150個。大量に買ってくれるなら、と業者から半額程度で仕入れることが可能なんです」
聞けばこの山浦さん、イタリアの3つ星レストラン『アンティカ・オステリア・デル・ポンテ』などで修業をした、輝くばかりの経歴の持ち主。
「俺イタに来るまでは、客単価2万5000円という料理を作っていました。今も原価を下げているわけではなく、同じ材料で、同じように料理を作っている。違いは価格がひとケタ少ないってことだけです」(山浦さん)
山浦さんだけではない。『俺のフレンチGINZA』では、フレンチの超一流店『シェ松尾・松濤レストラン』の元料理長がシェフを務めるなど、「俺の~」はどの店も一流の料理人が腕をふるっているのだ。そんな一流の料理人たちが坂本社長の下に集うのはなぜか。
「社長からは食材はじゃぶじゃぶ使ってくださいと言われています。おいしいものを出してくれるならと、材料費に文句を言われたことは一度もありません。これはシェフ冥利につきます」(山浦さん)
ここまで聞けば、おいしいのもうなずけるだろう。
※女性セブン2013年3月28日号