結果は12チーム中の5位。一昨年のW杯優勝、昨年のロンドン五輪準優勝に比べると、アルガルベカップに臨んだなでしこジャパンに“惨敗”の感は否めない。ただ、チーム関係者からは「想定内」との声が漏れる。
「今回の代表(23人)のテーマは“澤カラーの一掃”。女子サッカーの顔・澤穂希(34)だけでなく、彼女を慕う宮間あや(28)、大野忍(29)らの招集が見送られ、川澄奈穂美(27)、大儀見優季(25)らを中心に据えた。とはいえ、最年長の川澄はリーダータイプではないし、大儀見も典型的な“FW性格”だから、2人にチームをまとめさせるのは無理があった」
佐々木則夫・監督もそんなことは百も承知のはず。しかも、「今後も澤の代表復帰は考えていないだろう」(同前)という。その背景にはソロバン勘定があるといわれる。
「なでしこブームが続いた昨年まではスポンサーが続々と名乗りを上げていたが、今では停滞気味。しかもW杯や五輪の時に名乗りを上げたスポンサーは澤個人の起用ばかりで、他の日本代表やなでしこリーグ所属チームに興味を示さない。そこで澤に代わるスター選手を育てることで、新たなスポンサー開拓を狙っている」(サッカー協会関係者)
昨年のヤングなでしこ(U20日本代表)の中心選手で澤と同じポジション(ボランチ)の田中陽子(19)を起用したのも、そんな戦略の一環と見られている。
「田中の他にも、今回はフル代表には選ばれなかったものの、今後は猶本光(19)、仲田歩夢(19)ら、“CM映え”する若手が重用されていくでしょう。協会も監督も、当面の戦力低下を覚悟の上で2016年のリオ五輪を見据えたチーム作りを考えている。ただし、澤の不在で、肝心の選手たちに緩みが出ているところが心配です」(サッカージャーナリスト)
邪魔者扱いされている澤が何だか不憫に思えてくるが、澤の所属するINAC神戸関係者はこう語る。
「澤は個人CM契約の際に、出演料の大部分をチームに分配できる契約を結んでいるんです。チームメートの待遇改善、そして女子サッカーの底辺拡大を願ってのもの。いつでも後進に道を譲るつもりでいるし、代表を外れたことに対する不満は聞いたことがない」
先輩の心、後輩知らず──か。
※週刊ポスト2013年3月29日号