政府・自民党は、ここにきて来年4月に消費税を8%に引き上げる増税実施準備をどんどん進めている。
自民党は消費税引き上げの際、スーパーや量販店など小売業者が増税分を値引きする「消費税還元セール」を禁止し、値上げカルテルを認める特別措置法案を国会に提出することを決定した。特措法ではさらに中小企業の業界団体が増税分の価格上乗せ方法を共同で決める「転嫁カルテル」を認めて、独占禁止法の適用除外とする方針だ。
還元セールの禁止では、企業や小売店が経営努力で値引きすることもできなくなる。いわば「みんなで値上げしよう」法案であり、消費者のために値引きセールをした業者を、「税を取る役所」の国税庁(財務省)と「消費者を守る役所」の消費者庁が取り締まる。還元セールを行なった企業は名前が公表され、調査が入る。値上げに協力しない企業は“犯罪者”扱いである。
一方で財務省は増税後の住宅需要冷え込み対策として、今年9月末までに注文住宅の購入契約を結べば引き渡しが来年4月以降でも税率を5%のままにする経過措置を打ち出した。税率引き上げが正式に決まってもいないのに「経過措置」とはふざけた話だが、これも増税の「来年4月実施」を既成事実化する露骨な動きだ。
本来、アベノミクスは、景気回復で経済を成長させ、その結果、サラリーマンの給料が増えて物価も上がるというデフレ脱却の好循環を目指す政策だったはずだ。しかし、いまやっていることは、消費増税の条件を達成するために、強制的な「官製インフレ」をやっているようにしか見えない。
※週刊ポスト2013年3月29日号