核実験の次は南北休戦協定を一方的に破棄、板門店のホットラインまで封鎖して「先制攻撃する用意がある」と米韓を挑発するなど、北朝鮮が瀬戸際外交をエスカレートさせている。そんな中で、安倍晋三首相の“極秘計画”が漏れ聞こえてきた。
北朝鮮は金正恩体制下で行なった経済改革の失敗で国内が一層困窮し、よほど追い詰められていることがわかるが、「北の暴発」は日本の危機に直結する非常事態だ。
そんな折も折、首相官邸では安倍首相の「6月電撃訪朝」が計画されているという情報が伝わってきた。安倍首相にとって拉致問題は出世の原点だ。小泉純一郎内閣の官房副長官当時に北朝鮮訪問に随行して拉致被害者5人を一時帰国させ、「このまま北に戻すべきではない」と主張して日本に取り戻したことで名を上げた。安倍側近議員が語る。
「総理は自分の手で拉致問題を解決したいという意識が非常に強い。外務省は北の核実験や国連の制裁強化で今は日朝交渉のタイミングではないと否定的だが、総理の考えは“北が困っている時が譲歩を引き出すチャンス”というもの。
オバマ大統領は表向き北朝鮮批判を強めているが、米国はかつての米中国交交渉のように、突然、日本の頭越しにドラスティックな北朝鮮との平和条約締結交渉に動く可能性が十分にある。総理は外務省の意見を聞いていたら出遅れるといって、話がまとまれば夏前の6月にも自ら訪朝するつもりで外務省とは別ルートで交渉パイプを拓こうとしている。当然、そこには7月の参院選に向けたサプライズという意味もある」
そのひとつと見られているのが日本のメディアで唯一、平壌に支局を開設している共同通信ルートだ。核実験3日後の2月15日、安倍首相は同社の石川聡社長と日本料理店で2時間にわたって会食したが、北朝鮮情勢の情報交換が目的だったと見られている。
「総理はその1か月前にも、官邸で石川社長と会談している。メディアのトップを官邸に呼ぶのは異例だが、その日は直前に拉致問題で北との交渉にあたってきた三谷秀史・拉致問題対策本部事務局長代理(当時)も呼ばれていた。そこで官邸外交の布石が打たれた」(同前)
※週刊ポスト2013年3月29日号