3月17日(現地時間)の準決勝でプエルトリコに惜敗した山本ジャパンだが、無事、アメリカ行きも果たし、盛り上がったことは間違いない野球の世界一決定戦・WBC。東尾修コーチ曰く、「投手には分からない打者特有の見方があるんだろうね。打つ策、打つ策が当たるから、誰も何もいえなくなっちゃうよ」
WBCの予選ラウンドを通じて、山本監督の采配は冴え渡った。思わぬ苦戦を強いられた初戦のブラジル戦では、1点ビハインドの8回に内川聖一がヒットで出ると、ベテラン稲葉篤紀のところで代打・井端弘和を起用。これが見事に同点打を放った。続く相川亮二の打席には、スタメンを外れていた阿部慎之助を送って逆転に繋がった。
中国戦で中田翔をスタメンに起用すれば先制打をかっ飛ばす。台湾戦の最終盤では、ほとんど負けていた9回2死から盗塁のサインを出し、井端の同点打を引き出した。
オランダ戦に至っては、それまで5戦ノーヒットだった鳥谷敬を1番打者に指名。先頭打者ホームランを打つと、湿っていた打線がにわかに点火。1試合6本塁打の花火大会で、準決勝進出を決めてしまったのだ。しかし、である。
「負けている9回2死の場面で“行けたら行け”なんてセオリー無視のサインを出しますかね。あれは監督じゃなくて、走って成功した鳥谷がスゴいんですよ」(球界関係者)
というのが大方の意見のようで、「どうみてもカンにしか見えない」(同前)という。鳥谷の1番抜擢も、前夜の食事の席で山本監督が、
「明日は勢いのある順に(オーダーを)組もう」
と宣言して決まったのだとか。同席していた高代コーチは、「カンではなく、勢いを優先して決めている」と説明したが、これが“弁護”になるのかどうか。
「投手のことは分からんから東尾コーチに任せる」
といっていたはずだが、山本監督は早々と準決勝での前田健太の先発を公言。東尾コーチがため息混じりにいうように、誰も何もいえないとすれば、この投手起用も信じるしかないのでしょう、ね。
※週刊ポスト2013年3月29日号