日本の鉄道会社の中で最大規模を誇るJR東日本は、2011年3月11日に起きた東日本大震災を国鉄改革に次ぐ「第二の出発点」と位置づけた。社会インフラとしてはもちろん、日本を代表する企業として、同社はどんな未来へレールをつなげようとしているのか。
日本一の鉄道会社ではあっても、JR東日本は単なる“ぽっぽや”ではない。
2012年3月期(2011年度)の売上高約2兆5321億円の内、本業の運輸業は約1兆7057億円(売上構成比は約67%)。決算上は運輸業に入っているが、「びゅう」や「大人の休日倶楽部」といった企画や旅行商品を幅広く展開しており、巨大旅行会社という側面があることは見逃せない。
さらに、3割以上に当たる8000億円ほどを、鉄道以外の事業で稼ぎ出しているのがJR東日本の特徴だ。
JR東日本が小売りとともに経営の柱に育てようとしているのが、ICカードの「Suica」事業だ。発行枚数は2013年1月末時点で約4200万枚。電子マネーとして、全国約20万の店舗で利用できる。この3月23日から全国の交通系カードの相互利用がスタートすることも話題になっている。
発行枚数だけ見ればトップクラスのSuicaだが、JR東日本の中堅幹部は渋い表情でこう語る。
「決済額では(イオンが発行する電子マネー)WAONに突き放されている。(セブン&アイが発行する)nanacoもそうだが、流通系カードにはポイント付与サービスで先行されている。Suicaは数百円の少額決済が多く、手数料収入で事業の柱にしていくにはまだ時間がかかる」
とはいえ4200万枚という巨大なマーケットには、大きな可能性がある。個人情報の壁はあるが、年齢層や性別や購買動向の膨大なデータを分析すれば、出店や品揃えの戦略立案、新業態の開発などにも役立つだろう。
※SAPIO2013年4月号