女性のがんにかかる“率”の第1位「乳がん」。医学博士で乳腺専門医の「ナグモクリニック」総院長の南雲吉則先生が最近増加している乳がんについて解説する。
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女性のがん死亡率の第1位は大腸がんだけど、がんにかかる“率”の第1位は乳がん。日本人女性の18人に1人が一生の間に乳がんにかかるんだよ。では、乳がんがなぜこれほど増加しているのか説明しよう。
女性の生理を“月経”というように、月経は月の満ち欠けと同じ、28~30日周期で起こるよね。この月経周期に合わせて2つの女性ホルモンが分泌される。
1つはエストロゲンといって、排卵直前に異性を引きつける“女性らしさホルモン”。もう1つはプロゲステロンといって排卵後に母親になるための準備をする“母親ホルモン”なんだ。このうちエストロゲンは、母乳を乳頭まで運ぶ“乳管”の細胞を増殖させる働きがある。
昔の女性は、今のように栄養状態がよくなかったので、初潮が遅くて閉経が早かった。さらに、早婚で多産だった。妊娠・授乳中は月経は止まっているから、月経のある期間が短かったので女性ホルモンの分泌量が少なかった。そのため乳がんが育たなかったんだね。
ところが現代は、未婚・晩婚・少子化の時代。栄養状態もいいので長い期間、規則的に月経がある。乳管の細胞は、エストロゲンによりずっと細胞分裂を繰り返しているので、すぐに分裂の限界を迎える。そのとき現れる永遠に細胞分裂する修復細胞が、乳がんというわけなんだ。
ぼくは乳がんの専門医として、数えきれないほどの患者さんを診てきたけど、再発したり転移して苦しむかたがたも少なくなかった。
そこでがん患者を減らし、がんを克服するために必要なことは何だろうと考えたんだけど、それはただひとつ、生活習慣の改善だったんだ。その考えが、これまでの連載でぼくがお話ししてきたことの根底にあるんだよ。
がんを憎み、運命を呪うのではなく、原因となった生活習慣を反省し、心を入れ替えることが大切だね。
※女性セブン2013年3月28日号