来年4月から消費税が5%から8%に引き上げられる予定だ。かつて橋本龍太郎内閣は阪神・淡路大震災の復興需要で景気が上向きかけた時(1997年)に消費税率を3%から5%に引き上げ、減税廃止、健康保険の窓口負担引き上げなど年間9兆円もの国民負担を増やした。それをきっかけに景気は一気に落ち込み、日本経済は現在まで続くデフレに入った。
経済アナリストの森永卓郎・獨協大学経済学部教授は「橋本増税の二の舞を演じようとしている」と警鐘を鳴らす。
「安倍晋三首相が予定通り来年4月に消費税を上げれば同じことが起きるはずです。現在の日本経済は震災後の莫大な復興予算に支えられているが、それでも景気は低迷してきた。安倍政権は新たに13兆円の景気対策を組んだものの、来年4月はその景気対策の効果が薄れ、復興予算も使い果たす最悪のタイミングなのです。
安倍首相はそのことをわかっていて、それでも税率を上げるつもりでしょう。アベノミクスの金融政策も財政出動も、7月の参院選を乗り切り、増税を確実に実現するためのものなのです」
ちなみに消費税アップに加えて年少扶養控除といった減税廃止、厚生年金保険料のアップなど国民負担増が相次いでいることも橋本内閣当時と似ている。
政府(内閣官房社会保障改革担当室)の試算によると、年収500万円の夫婦と小学生2人の4人世帯は、増税や控除廃止などを合わせると2016年には年間33万8000円もの負担増となる。サラリーマンの手取り収入が7%アップしないとカバーできない金額だ。
安倍首相は経団連はじめ経営者団体に対して、アベノミクスで業績が回復している企業の賃上げを要請し、麻生太郎財務相も、「連合に代わって給料を上げてもらう交渉をしている。この10年間労働分配率は下がり、物価以上に給与が下がった。企業の一番上の方々に決断していただく」と胸を張った。
だが、経団連は春闘の指針で「ベースアップを実施する余地はない」としており、春闘の妥結内容を見ると、円安の恩恵を受ける輸出企業でさえボーナスが少し上乗せされた程度だ。
※週刊ポスト2013年3月29日号