一般紙やテレビが報じる日々のニュースを眺めているだけでは見えない、各業界の細部の様子。その専門「業界」を伝え、大メディアを出し抜くスクープを狙い、日本経済のダイナミズムを伝える濃厚な情報が詰まった2000を超える業界紙のなかから「酒販ニュース」(発行部数/7万部、発行日/毎月1・11・21日、価格/年間1万4700円)を紹介する。
焼酎の空き瓶やビールの空き缶が散乱し、酒臭い空気が充満……かと思いきや、編集部は小綺麗な新築ビルのワンフロアにある(勝手な想像で失礼しました)。醸造産業新聞社が発行する『酒販ニュース』と『日刊醸造産業速報』は、一般紙を相手にスクープ報道で渡り合う。
その多くは酒税法改正に関する話題だ。例えば「第3のビール」の酒税論議などは世間的な関心も高いため、一般紙と同じ土俵で取材する。今年は『日刊醸造産業速報』が税制改正大綱について一般紙より1日早くスッパ抜いた。
編集部長の政所明氏は胸を張って語る。
「酒税に関する話題は、日経新聞との勝負になりますが、これまでのところ私たちが先んじた記事がありますし、他の記事でも同日です。日経に五分以上の戦いをしているんですよ」
業界紙が日本を代表する経済紙を負かすのだから、さぞや爽快だろう。
購読層は、『酒販ニュース』は小売業者が7割を占め、メーカー、卸業者のほか、国税庁や税務署などでも多く読まれている。『日刊醸造産業速報』の読者は、酒造メーカーが中心だという。
※週刊ポスト2013年3月29日号