尖閣問題をはじめ亀裂が深まる日中関係だが、日本政府の外交力の欠如も大きな問題点となっている。 相手と“落としどころ”を探る水面下のルートを持っていなかったことが危機を深刻化させた。
『日本最悪のシナリオ 9つの死角』(新潮社刊)の執筆陣の1人、秋山信将・一橋大学国際・公共政策大学院教授がいう。
「1970~1980年代には、日中両国のトップレベルの政治家の間に個人的な信頼関係が築かれており、バックドアのパイプで事態収拾が図られることも多かった。かつて日本側で中国首脳筋と話ができた政治家といえば、田中角栄、大平正芳、竹下登という元首相が代表格です。ところが、残念なことに今はそれがない。
エスカレートした衝突は両国に利益をもたらさない。その点を確認して、互いの面子を潰さぬように解決していくメカニズムが求められます。そのためにも、外国の首脳と信頼関係を持つリーダーが出てこないといけません」
※週刊ポスト2013年3月29日号