芸能

最高の離婚「反発しつつ高評価」の視聴者多い理由を作家分析

 今期注目のドラマ、奇抜なタイトルだけでなく視聴者をストーリーに巻き込むという意味でも新しい方向性を示したといえそうだ。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析する。

 * * *
「ヤフーテレビ」の「みんなの感想」コーナーで、ドラマ部門コメント数トップの座を、『純と愛』から奪取したドラマ。それが、『最高の離婚』(フジテレビ系・木曜夜10時)です。いよいよ3月21日木曜日が最終回、15分の拡大版とか。

 登場人物は、2つのカップル。離婚したばかりの妻・結夏(尾野真千子)と奇妙な同居生活を続けつつ、偶然再会した学生時代の恋人にも引かれていくサラリーマン・光生(瑛太)。一方、複数の女との関係が精算できない上原諒(綾野剛)と、その諒に惹かれるけれど許すことができない灯里(真木よう子)。2つの個性的なカップルが、からみあい、不思議な化学反応を生み出していく。

 毎回放映されるラストのダンスシーンも、凝っています。

 桑田佳祐の主題歌「Yin Yang(イヤン)」にのせて、4人がタキシードとドレス姿で思わせぶりに絡み合いながら踊る。ここのところ、白スーツ姿の桑田佳祐までもが踊りに“乱入”して、話題を振り撒いています。

 ドラマのコメント書き込み数は、トップ。でも、ストーリー展開に対する視聴者の書き込み内容は、必ずしも「納得」のオンパレードとはいかないようです。

 第9話から前回の第10話。灯里は諒の子を妊娠していることを知る。諒は女たらしで、何人もの女性関係が発覚。灯里はそんな諒を、どうしても受け入れることができずに別れたばかり。それなのに。「妊娠」がわかったとたん、あっさり「諒とやりなおす」という結論を出す灯里。その姿勢に対して、納得できないという視聴者の声…。

「子供のためだけにヨリを戻し、相手を愛せない仮面夫婦なんかになっても二人は幸せになれない」
「そんなに簡単に、仮面の夫婦は演じられない」
「自己完結している灯里は好きになれない」

 興味深いのは、そうした辛口コメントの中味、ではありません。

 厳しい書き込みをした視聴者たちが、ドラマに星をいくつ入れているのか。「5つ星」、つまり最高ポイントを入れる視聴者が実に多いのです。ちょっと不思議ではありませんか? 「最高の離婚」というドラマが、書き込み数トップとなる理由も、実はそこにあるのでは。

 視聴者はドラマの内容に「寄り添う」けれども、必ずしも「同じ結論を出す」わけではない。自分なりの考えや意見、選択肢を持っている。結論を共有しなくも別にかまわない。

 主人公たちの心の揺れ、その心理的プロセスが丁寧に細やかに描かれてさえいれば、たとえストーリーの行き先に同意できなくても、それはそれでオッケー。ドラマ自体は高く評価するのです。それが今の視聴者の、ひとつの視聴スタイルではないでしょうか。

  ドラマの結論を共有する、というよりも、進行していく「プロセス」そのものをともに分かち合い、自分もそこで考えてみたい。それが、現代のドラマの楽しみ方の一つではないでしょうか。

 お茶の間でドラマを見る時。「私ならどうする?」と、あなたは絶えず自分自身に問いかけていませんか?

「あなたならどうする?」

 最終回を迎えるドラマの中に、さて今回はどんな問いかけが潜んでいるでしょう? 

関連記事

トピックス

広末涼子(時事通信フォト)
【自称・広末涼子容疑者が逮捕】「とってもとっても大スキよ…」台湾フェスで歌声披露して喝采浴びたばかりなのに… 看護師女性に蹴り、傷害容疑
NEWSポストセブン
北極域研究船の命名・進水式に出席した愛子さま(時事通信フォト)
「本番前のリハーサルで斧を手にして“重いですね”」愛子さまご公務の入念な下準備と器用な手さばき
NEWSポストセブン
麻布台ヒルズの個展には大勢の人が詰めかけている
世界的現代美術家・松山智一氏が問いかける“社会通念上の価値の正体” 『うまい棒 げんだいびじゅつ味』で表現したかったこと
週刊ポスト
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
工藤遥加(左)の初優勝を支えた父・公康氏(時事通信フォト)
女子ゴルフ・工藤遥加、15年目の初優勝を支えた父子鷹 「勝ち方を教えてほしい」と父・工藤公康に頭を下げて、指導を受けたことも
週刊ポスト
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン