3月中旬に閉幕する全国人民代表大会(全人代=国会)で李克強・副首相が首相に昇格し、中国共産党と政府が一体で船出する「習李体制」が正式に発足するが、その前途は厳しい。李副首相と習近平・党総書記が改革をめぐって対立し、権力闘争が激化することも予想される。
習近平はすでに党トップの総書記と軍トップの党中央軍事委員会主席に就任し、実質的な最高指導者としてフル稼働しているが、その言動は政治的には保守的で、軍事的にも強硬路線をひた走っているように見える。
とくに地方視察での軍部隊慰問では「戦争を準備しよう」と呼びかけ、「招集がかかったら、すぐに集まり、すぐに戦闘準備をして、戦争が始まったら必ず勝つ」と檄を飛ばし、「戦闘モード全開」の軍内タカ派ぶりを見せている。
党総書記就任直後、6人の党政治局常務委員を前に、毛沢東・元主席の言葉を引用して中華民族復興の意義を熱っぽく語りかけてみせるなど、まるで自身を毛主席の再来であるかのような錯覚を抱かせる振る舞いだ。
北京の中国筋は「習近平は民主化という国際的な潮流に逆行し、毛沢東時代に回帰することを望んでいるのではないかとさえ思わせる」と懸念を示す。
■文/ウィリー・ラム 翻訳・構成/相馬勝
※SAPIO2013年4月号