国内

新聞のストーリー優先の「当てはめコメント」は創作との指摘

 東日本大震災が起きた3月11日を中心に、あらゆるメディアで震災から2年といった内容の特集が組まれた。数多くの特集の中から、ジャーナリストの長谷川幸洋氏が、もっとも印象に残った記事を紹介しつつ、「当てはめコメント」問題について解説する。

 * * *
 東日本大震災から2年。3月11日付の各紙は震災と原発関連の特集記事を競い合った。その中で私が圧倒的に引き寄せられたのは、読売新聞の「東日本大震災2年 戻らぬあなたへ」という見開き2ページの特集だった。

 震災と津波で亡くなった計74人の犠牲者の顔写真や遺品に向けて、残された妻や夫、父母、子どもたちなど遺族がいまの思いを語りかける。コメントは1人10数行。だが、短い言葉に人々の深い悲しみがぎゅっと凝縮されていて、読む者の心を震わせる。

 1つだけ引用してみる。小学6年生(当時)の女の子を亡くした母の言葉だ。

「卒業式の後、友達と行くはずだったディズニーランド。初めて『着ていく服が欲しい』って言うほど楽しみにしてたのに。今でも運転中、バックミラー越しに、みーこに話しかけてしまうよ。姿が見えないだけで、そこにいるんだもんね。あの日着ていた服、時々抱きしめるんだ。もう、みーこを抱きしめられないから」

 コメントとは本来、こうあるべきなのではないか。その人が一番言いたいことを飾らずに、そのまま伝える。

 メディアはそれができそうで、できない。ときに新聞やテレビは誰かのコメントをそのまま紹介するというより、記者が事前に作ったストーリーに沿って都合よく話を当てはめてしまう。ストーリーこそが肝心で、コメントは補強材料という位置付けだ。それは週刊誌も例外ではない。

 ストーリー優先の「当てはめコメント」が横行するのは、肝心の取材に入る前に編集者や記者がどういう記事を書くか、を先に頭で考えてしまうからだ。だが、記者ならだれでも経験があるが、実際に取材してみると、自分が思い描いていたような話が出てこない場合はしょっちゅうある。

 頭で考えて組み立てたストーリーとは現実がまるで違ってしまうのだ。記者の基礎力とは、自分の想定とは違っても、新たな取材展開をできるかどうかにかかっている。現実に対応できない記者はそれまでである。

 あくまで自分の思い込みに固執する記者が往々にして安易な当てはめコメントに走ってしまう。ひどい場合だと取材相手に「こういう具合に喋ってほしいんだけど」と内容に注文をつける場合すらある。そうなると、創作記事と紙一重である。

※週刊ポスト2013年3月29日号

トピックス

還暦を迎えられた秋篠宮さま(時事通信フォト)
《車の中でモクモクと…》秋篠宮さまの“ルール違反”疑う声に宮内庁が回答 紀子さまが心配した「夫のタバコ事情」
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚を発表した(左・Instagramより)
《株や資産形成の勉強も…》趣里の夫・三山凌輝が直近で見せていたビジネスへの強い関心【あんかけパスタ専門店をオープン】
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
30歳差コーチとの禁断愛の都玲華は「トリプルボギー不倫」に学んだのか いち早く謝罪と関係解消を発表も「キャディよりもコーチ変更のほうが影響は大きい」と心配の声
週刊ポスト
小芝風花
「頑張ってくれるだけで」小芝風花、上海でラーメン店営む父が送った“直球エール”最終回まで『べらぼう』見届けた親心
NEWSポストセブン
安青錦(時事通信フォト)
最速大関・安青錦は横綱・大の里を超えられるのか 対戦成績は0勝3敗で「体重差」は大きいものの「実力差は縮まっている」との指摘も
週刊ポスト
熱愛が報じられた長谷川京子
《磨きがかかる胸元》長谷川京子(47)、熱愛報道の“イケメン紳士”は「7歳下の慶應ボーイ」でアパレル会社を経営 タクシー内キスのカレとは破局か
NEWSポストセブン
三笠宮妃百合子さまの墓を参拝された天皇皇后両陛下(2025年12月17日、撮影/JMPA)
《すっごいステキの声も》皇后雅子さま、哀悼のお気持ちがうかがえるお墓参りコーデ 漆黒の宝石「ジェット」でシックに
NEWSポストセブン
熱愛が報じられた新木優子と元Hey!Say!JUMPメンバーの中島裕翔
《20歳年上女優との交際中に…》中島裕翔、新木優子との共演直後に“肉食7連泊愛”の過去 その後に変化していた恋愛観
NEWSポストセブン
記者会見に臨んだ国分太一(時事通信フォト)
《長期間のビジネスホテル生活》国分太一の“孤独な戦い”を支えていた「妻との通話」「コンビニ徒歩30秒」
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(EPA=時事)
《“勝者と寝る”過激ゲームか》カメラ数台、USBメモリ、ジェルも押収…金髪美女インフルエンサー(26)が“性的コンテンツ制作”で逮捕されなかった背景【バリ島から国外追放】
NEWSポストセブン
「鴨猟」と「鴨場接待」に臨まれた天皇皇后両陛下の長女・愛子さま
(2025年12月17日、撮影/JMPA)
《ハプニングに「愛子さまも鴨も可愛い」》愛子さま、親しみのあるチェックとダークブラウンのセットアップで各国大使らをもてなす
NEWSポストセブン
SKY-HIが文書で寄せた回答とは(BMSGの公式HPより)
〈SKY-HIこと日高光啓氏の回答全文〉「猛省しております」未成年女性アイドル(17)を深夜に自宅呼び出し、自身のバースデーライブ前夜にも24時過ぎに来宅促すメッセージ
週刊ポスト