一般紙とはことなり、とある一つの業界を深掘りする「業界紙」は、「深い・新しい・詳しい」の三拍子が揃った新聞だと、経済アナリストの森永卓郎氏は語る。
「とにかく半端じゃなく詳しい。読者は主にその業界に携わる人ですから、専門用語を駆使し、実際に役立つレベルまで踏み込みます。例えば、『全国きのこ新聞』(農業経済新聞社)。きのこといいながらほぼしいたけの記事ですが(笑い)、しいたけについてのみ、延々と紙面を割く。読めば、相当コアなしいたけ情報が得られます」(森永氏・以下「」内同)
シンクタンクに所属した経歴がある森永氏は、当時、『電波新聞』(電波新聞社)を読んでいたそうだ。
「所属する部署内にシステム開発の部隊を持っていたので、自分たちの業界ではありませんが、『電波新聞』はみんなよく読んでいたんです。コンピュータやAV関係の技術についての情報が満載でした。余談ですが、社内では“電波新聞をかぶって寝ると、よく眠れる”といういい伝えがあったんですよ。科学的根拠があるかは不明ですが(笑い)」
現在は仕事柄、消費と流通を専門的に扱う『日経MJ(流通新聞)』(日本経済新聞社)を購読している。さらに、記事の執筆をきっかけに読むようになった『ねこ新聞』(猫新聞社)が、目下のお気に入りだという。
「今のところ、ビジネスにはまるで役に立たないけれど(笑い)、猫マニアの琴線にふれる記事がいっぱいあって、たまらない。“猫ってこういうものだよ”とか、“私と猫”だとか、全面猫。癒されるんですよね」
『ねこ新聞』のように、「自分が関心を持てる、好きな分野を見つけて業界紙を読んでみてはどうか」と、森永氏は提案する。
「図書館で、いろいろな業界紙にまずはざっと目を通してみる。自分は関心がない分野だと思っても、紙面をみて興味がわくというのは、実はちょくちょくあるんです。“エッ!?”と目につく記事を見つけたら、そこを掘り下げれば、知識が深まる。世間のビジネスマンは、知識の範囲がものすごく狭い。まずは業界紙に触れることから、知識の幅を広げていくのもいいと思います」
※週刊ポスト2013年3月29日号