疲れた体にシャキッと爽快感を与えてくれる栄養ドリンク。医薬品と医薬部外品を除く国内の定番ブランドは、「オロナミンC」(大塚製薬)や「リアルゴールド」(日本コカ・コーラ)など多数存在するが、いま、同市場を脅かすほど席巻しているのが、海外発のエナジードリンクだ。
市場調査会社・富士経済によるエナジードリンクの定義は、「エネルギー補給を訴求し、カフェインやアルギニン等の成分を含有した炭酸飲料で、かつ1本当たり小売価格が200円以上の商品」となる。その市場規模(2012年見込み)は266億8000万円、対前年比の伸長率はなんと217.4%と、低迷する飲料業界で驚くべき売れ行きを記録している。
エナジードリンクを牽引するのは、オーストリア発で全世界の累計販売本数46億本以上といわれる「レッドブル」。日本には2005年に上陸し、若者を中心にヘビーユーザーを獲得してきた。
飲料総研の宮下和浩氏が、レッドブルの強さの秘密を語る。
「国内の栄養ドリンクは『疲労時の体力回復をサポートする』などネガティブ要因からの商品訴求がほとんどですが、レッドブルは『スポーツや遊びへのエネルギーチャージ』とポジティブでファッショナブルな飲料とのイメージを植え付け、新規需要の開拓と獲得に成功しました」
ブランド価値を高めるレッドブルの露出は海外では顕著だ。エクストリーム系スポーツのほか、スポンサードする自動車のF1チームはチャンピオンシップ3連覇中。ドリンク同様まさに破竹の勢いを見せている。
日本におけるレッドブルの販売数は、2012年は推計で350万~400万ケース(飲料総研調べ、1ケースは24~30本入り)。昨年5月よりアサヒ飲料が米国生まれの「モンスターエナジー」の日本独占販売を開始しているが、160万ケースと猛追及ばず。
同じく昨年8月から一度は撤退したエナジードリンク市場において「バーン」ブランドで起死回生を図るコカ・コーラシステムも、50万ケースとレッドブルの背中は遠く見えない。
そんな競合ひしめくエナジードリンク市場に脅威を感じながらも、堅調な販売を堅持しているのが、国内発の炭酸入り栄養ドリンクである。
「トップのオロナミンCは1060万ケース、続くリアルゴールドは流行りの素材を使った『リアルウコン』が息の長いヒットになりシリーズ合計850万ケース、3位の『デカビタC』(サントリー)でも840万ケースと、単純なケース換算比較は難しいもののレッドブルの2倍以上は売れています。長年国内で培ったブランド力は絶大です」(前出・宮下氏)
だが、いつまでも“貫録”だけで生き残れるほど甘い世界ではない。レッドブルはゼロカロリーの「レッドブル・シュガーフリー」を投入したり、夜の酒場ではレッドブル割りをアピールしたりと、日本市場のさらなる開拓に余念がない。
さらに、キリンビバレッジとライセンス契約を結び、今年5月からキリンの自動販売機24万台にレッドブルがラインアップされることになった。
「若者の多く集まる繁華街やスポーツ・娯楽施設などの自販機でレッドブルが買えるようになれば、その分の販売上積みは間違いない」(飲料業界関係者)
今後、レッドブルの勢いはどこまで続くのか。
「マラソンはじめスポーツ人口の増加、ホンダのF1参戦、景気回復などもろもろの条件を考えると、海外のエナジードリンクのほうが認知度アップに明るい材料が揃っている感じはします。ただ、200円以上の価格に見合った価値が実感し続けられなかったら、すぐに消費者は離れていきます。元気になって、眠気も吹き飛んで……最後はやはり中身の勝負になるでしょう」(宮下氏)
日本の名ブランドVS海外の新興勢力の構図になっている栄養ドリンク市場。今年は果たしてどちらに軍配が上がるのか。