昨秋亡くなった流通ジャーナリスト・金子哲雄さんの『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』(小学館刊)が22万部突破のベストセラーになっていることなどの影響もあり、葬儀関連のセミナーは大盛況だという。
「金子さんの終活には、頭が下がる思いでした。その影響もあってか、自分や家族が困らないための事前準備“終活”が大ブームです。その結果、“自分らしい・故人らしい葬儀”を希望する人が増え、個性化した葬儀が増えてきました。しきたりは重んじながら、葬儀の一部に故人らしさを織り込んでいるようです」
こう話すのは、葬儀コンサルタントの吉川美津子さん。
例えば、故人のアルバムやお気に入りのものなどを展示したメモリアルコーナーを設けたり、祖母の思い出の手料理を再現して振る舞ったりなど、参列者が感動するような演出が行われている。
「一方、最近の傾向といえば簡素化。無駄なお金は使いたくないから、シビアに葬儀社を比較検討する人が多いです」(吉川さん・以下同)
現在、最も多いのは「家族葬」と呼ばれる、親族を中心としたごく内輪の送り方(費用は参列者10名で※58万円~)。また、東京都心部に限ると2~3割を占めるという「直葬(火葬式)」(※22万円~)も増えている。内容は、遺体の搬送・預かり・納棺・火葬のみのシンプルなもの。
「故人の高齢化と、地域のコミュニティーが薄れてきているので、参列者が減少。考え方が“家”から“個”に変化しました。そういった背景も影響していると思われます」
遺族や故人の遺志を反映する“エンディングプランナー”の育成に力を注ぐ葬儀社・アーバンフューネス社長・中川貴之さんはこう話す。
「どんな送り方をしたいですか? と何時間もかけて遺族の思いを引き出し、葬儀のテーマを決定します。プランナーが感性で感じ取った、言葉にならない遺族の希望も形にしています。その結果がサプライズ演出だったりすることも…。いつまでも思い出に残る葬儀を目指しています」
まるで結婚式の“ウエディングプランナー”のようだが、それもそのはず、中川さんはブライダル業界から葬儀業界に参入した経歴の持ち主だ。
最近人気の葬儀は、映像葬。写真をスライドショーにしたり、ビデオカメラで撮った動画が残っている人も増えているので、素材を集めやすいという。披露宴の演出とあまり変わらないのだ。
前出の吉川さんは、現在を過渡期と考える。
「近い将来、病院のベッド数の限界から、自宅で亡くなる人が増加するでしょう。そのまま自宅で葬儀し出棺する“簡略化”がより進むと思います」
※女性セブン2013年4月4日号