北朝鮮の核実験でコケにされた中国・習近平指導部。権力闘争の内幕をジャーナリスト・相馬勝氏が解説する。
* * *
習近平が昨年11月15日、党と軍のトップに就任してから2月22日で100日が過ぎた。この間、公表されているだけで、広東省のほか、河北省の貧困地区やモンゴルとの国境付近の甘粛、青海両省の地方視察をこなし、6か所の地方部隊を回り、党政治局会議や軍など北京で重要会議を10回以上主宰。そのつど重要な指示を発し、「共産党政権存続」に悲壮ともいえる強い決意を示してきた。
とくに軍に対しては、11月下旬の党中央軍事委拡大会議で「戦争を準備せよ」と指示、さらに2月6日の蘭州軍区視察では「招集されたら、すぐに集まり、集まったらすぐに戦い、戦ったら必ず勝つ」と語り、「軍事闘争の準備を深化、強化しなければならない」と訓示した。軍内では習近平の指示により「禁酒令」が出され、元日や2月10日の春節(旧正月)期間にまで全国各地で休暇返上の軍事演習が行なわれた。沖縄県尖閣諸島にも旧正月当日の2月10日、中国海洋局の監視船3隻が領海近くの接続水域に侵入した。
さらに、地方や中央を問わず、恒例の党・政府機関による大規模な忘年会や新年会は中止となった。「知り合いの党幹部は『北京のレストランでは官庁による宴会予約が軒並みキャンセルされ、例年の売り上げの1割にも満たないレストランが目立った』と嘆いていた」(日系企業幹部)との証言もある。また、習近平の公約ともいえる党・政府幹部の腐敗撲滅に関連して、政府はテレビやラジオで海外ブランドをはじめとした高級品のCMを禁止する通達を出したことから、高額品の売り上げが過去最低の伸びとなった。
「北京は15日までの春節期間中、いまや名物となった大気汚染に悩まされたうえ、倹約令で冷え冷えとした雰囲気に包まれた。これほど活気がなかった春節は初めて」と10年以上も北京に駐在する別の日系企業幹部は嘆息する。
※SAPIO2013年4月号