3月中旬に閉幕した全国人民代表大会(全人代=国会)で李克強・副首相が首相に昇格し、中国共産党と政府が一体で船出する「習李体制」が正式に発足したが、その前途は厳しい。李首相と習近平・党総書記が改革をめぐって対立し、権力闘争が激化することも予想される。
李克強と言えば、中国の知識人からは「温家宝・首相と同じく改革派で、『経済改革の果実を手にするには政治改革が必要だ』という主張を踏襲するリベラル派」とみられている。温家宝は改革派の両輪だった胡耀邦、趙紫陽の両元総書記に仕え、首相に就任してからもたびたび政治改革に言及した。
李克強は胡耀邦同様、中国共産主義青年団(共青団)出身で、北京大学時代には中国共産党の民主改革を熱心に主張したことで知られる。それだけに、中国内では知識人を中心に李克強への期待が高まっているのである。
とはいえ、李克強は2007年秋に党最高指導部である党政治局常務委員会入りしてから5年間、一言も政治改革に言及していない。温家宝のように3月に引退することが決まっているならともかく、今後10年間、習近平の下でナンバー2として権力を維持しなければならず、不用意な発言で自身の政治生命を危機にさらすことはできないとの深謀遠慮かもしれない。
■文/ウィリー・ラム、翻訳・構成/相馬勝
※SAPIO2013年4月号