今、新聞、テレビなど大手メディアの大半は体罰全否定論に傾いている。だが、体罰を必要とする場面は本当にないのか。現場を知る教師からは正直な異論も出ている。
体罰は学校教育法第11条によって禁止され、さらに2007年、文科省が全国の教育委員会教育長らに出した「通知」で、「殴る」「蹴る」ばかりか、「正座・直立等特定の姿勢を長時間にわたって保持させる等」も体罰に該当し、「いかなる場合においても行ってはならない」とされた。
また、昔と違って親も家庭のしつけで体罰を施すことが少なくなった。そうしたことから教師はいっそう体罰を施しにくくなったという。あるベテランの現役小学校教師が嘆く。
「ゲンコツで頭を叩くと、理由の如何を問わず親から抗議されるようになり、教師は萎縮し、自己規制するようになりました。『児童に厳しく注意する時には、間違っても手を出さないよう手を後ろに組む』と言う教師もいます。それに対して、高学年になると教師の弱みを知っていて、『先生は僕を殴るとクビになるんでしょ』『殴れる?』と挑発する児童もいますからね」
まして中学生、高校生ともなれば、もっと教師を見くびることもある。今回の一連の事件を受けてメディアの間に体罰厳禁論がさらに強まり、教師は以前にもまして萎縮している。
「文科省は授業中、教室内で生徒を起立させることは体罰には当たらないと解釈していますが、それすらやめようという空気が生まれています。これでは教師が生徒と深く関わるのは難しい」(前出・小学校教師)
「日教組系の先生が今回の事態をチャンスと捉えているのか、私のいる現場では、厳しい言葉で叱責することも『生徒を言葉で傷つける』という理由で禁じようとしています」(現役中学校教師)
※SAPIO2013年4月号