実力世界のプロ野球界では、開幕に際して験を担ぐ選手が多いという。験担ぎに、食材は付きものだ。高校球児たちも「テキに勝つ」とばかり、肉やカツレツをよく食べるが、赤飯や鯛の他、開幕日に食べるものを決めていたタイプも少なくない。日本人メジャーリーガー第一号の村上雅則もその1人。
「開幕前夜にはステーキとエスカルゴ。エスカルゴに深い意味はないんですが、食べたら3回続けて好投したことがあり、完全な験担ぎになりました。メジャー時代も同じですよ。他のメジャーリーガーにも同じような験担ぎがありましたね。魚を食べるとか、肉でもどの部位を食べればいいとか」
メジャーといえば、イチローも同様。開幕日の前夜は好物の牛タンを食べ、その帰り道のセブン-イレブンで、クリームパンを購入。翌朝、牛乳でこれを胃袋に詰め込み出陣していたことは、あまり知られていない。そしてユニークなのが、巨人を支えてきた新旧の中心選手である。1人は松井秀喜だ。
「元々は巨人の伝統通り、赤飯と鯛でしたが、メジャーに行ってからは鯛がないので、かわりにタイ料理を食べていた。アスレチックス戦の場合には相手のチームカラーを意識してグリーンカレーにするなど、シャレで話題作りをしてくれていました」(メジャー番記者)
もう1人は、相手チームに応じて特別メニューを考えていた、「昭和の怪物」こと江川卓である。阪神には虎屋の羊羹、中日なら名古屋のういろう。ヤクルトはそのままグッと呑み込み、カープが相手だと広島名物のカキフライで、大洋には鯨を食べる。これは夫人のアイデアだった。
(文中敬称略)
※週刊ポスト2013年4月5日号