詩人、小説家の伊藤比呂美さん(57)がエッセイ『閉経記』(中央公論新社/1470円)を上梓した。米国で家庭をもって15年。この本にまとめられた連載を書いていた2年前は、父親の介護のために熊本と米・カリフォルニアを往復していた。
「そのときは大変だったけど、親って死んで初めて、もっと生きていてほしかったなと思うのよね」
そう言ったあとで、「月経と一緒よ。ある間はあって当たり前なのに」という伊藤さんは詩人である。
<経血や
しょぼしょぼしょぼと
寂しそう。>
ひとつひとつのエッセイにつけられた俳句もどきの題からも、思いがうかがえる。
「あれ(月経)も楽しかったなぁ~。でも終わっても楽しいですよ。ちょうど閉経の前後のころ、どうにもならないくらいに太ってたんです。なんとかしなくちゃなぁと始めたズンバに、見事にハマりまして」
ズンバとはエアロビクスとラテン系ダンスを合わせたようなエクササイズで日本でも一定の人気はあるが、米国のスポーツジムでは「朝8時から夜までクラスがある」ほどの人気。
「最初はインストラクターの動きが速くてまるでついていけなかったの。でも腰を高速で回してステップを踏んでいるうちに、大量の汗をかくわけです。それが気持ちよくて、またたく間にとりこになって、今では毎日、いや、1日に2度踊ることもありますね(笑い)」
<ズンバサンバルンバ
マンボタンゴに
チャチャチャチャチャ。>
頭から体から、ズンバが離れない。なぜにここまでズンバは面白いのか。
「ずっと私は、自分が主役の“プリマ”として生きてきたんです。あるいは独特な動きをする“キャラクター・ダンサー”とでもいいましょうか。離婚も子育ても、むこうでの暮らしも、あたしはあたし、で人生を渡ってきた。それなのに、今は皆で同じ動きをするズンバの“群舞”が楽しくてしょうがない」
<吹けよ風
つめたかないぞと
ズンバする。>
ズンバでは、骨盤に集中し、肛門を上に引っ張るイメージをしながら、腰を回す。これを体得すると、尿漏れや前かがみ、転倒予防にもなるそうな。つまり老後の健康対策。
「現地のクラスでは、50代の私なんて若いほう。ふとまわりを見ると、みんな同世代かそれ以上です。苦労もしてきた、性の盛りはとっくに過ぎた、そういう女たち。閉経したからこそ、そんな動きを体も心も必要としているのかもしれない、とも思う。
だけど、やせたくて始めたズンバなのに、8か月たっても体重はぴくりとも動かない。あれだけ大量の汗をかいているのに。ほとんどあきらめかけたころ、スルッと4kg落ちたの。うれしかったですねえ。しかもシワシワの蛇女になってない。これってすごいことじゃない?」
※女性セブン2013年4月11日号