厚生労働省は2月、2010年の都道府県別の平均寿命を発表。長寿No.1となったのは、男女とも長野で、男性80.88才で5回連続1位、女性87.18才で初の1位となった。
かつて長野は今のように“長寿県“ではなかった。その原因のひとつが脳血管疾患の死亡率の高さだった。1965年ごろまで、国民の死因1位でもある脳卒中による死亡率で長野県は常に全国でも有数のワーストランキング常連県だった。
この結果に危機感を覚えた長野県は、県を挙げての取り組みを始めた。1967年には、「食生活改善推進協議会」を設立。市町村を通じて、県民の食生活や健康状態について定期的な調査を行ってきた。長野県健康長寿課の担当者は次のように説明する。
「調査でわかったのが県民の塩分摂取量の高さでした。1980年度の長野県県民健康・栄養調査によれば、女性の1日平均塩分摂取量が15.9g。全国平均約13gから見ても高い摂取量で、男性は外食などでもっと摂っているのではないかと予測されました。この塩分摂取量が致死率を高めているのではないかと考え、1981年からは県をあげて本格的に減塩運動に取り組んできました」
塩分を摂りすぎると高血圧の一因になり、脳卒中や心臓病などさまざまな病気を引き起こすといわれている。
県は、食生活改善推進協議会を通じて、県民が普段摂っているみそ汁や漬物など食品の塩分濃度を測定し減塩のアドバイスをしたり、薄味で満足できる料理講習などを実施したりした。みそ汁は塩分を全体の1%にするよう指導したという。
その結果、1983年には、塩分摂取量を1日平均11gまで減らすことに成功。死亡原因の1位が脳血管疾患系の病気ではなくなった。
地元医療機関が地域で行った活動や長野・須坂市が設立した保健補導員制度も大きな役割を果たした。この制度は、食生活をふくめた健康に関する知識を学んだ補導員が、保健活動を行うもの。1958年に始まり今ではほぼ全市町村に広まっている。
「市民センターなどで地域の人たちに減塩レシピを教えるなど、さまざまな健康指導を行っています。保健補導員は1万1000人ほどいますが、2年交代なので経験者は長野県内でもたくさんいます。市民レベルでの健康知識が高いのです」(前出担当者)
※女性セブン2013年4月11日号