尖閣諸島をめぐって、好き放題にふるまう中国。日本は、アメリカが守ってくれるなどという幻想に頼らず、中国の覇権主義に屈しない「ケンカ国家」になるべきと、作家で新著・『ケンカ国家論』を上梓した落合信彦氏は指摘する。
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尖閣諸島を巡る中国の挑発行為が止まらない。中国海軍の艦船が海上自衛隊の護衛艦に射撃用の火器管制レーダーを照射。その後も尖閣周辺での領海侵犯が繰り返され、エスカレートする中国の傍若無人な振る舞いを日本は止められないままでいる。日本国内には今なお、「中国を刺激すると戦争に発展しかねない」という論が蔓延っているが、そんな考え方では、ならず者国家を止めることはできない。
私はこのたび、『ケンカ国家論』と題した新刊を上梓した。海外からの脅威に晒される日本の政府と国民は、「ケンカ」する力を身につけなければならないと強く感じるからだ。
勘違いしてもらいたくないので先に言っておくと、「戦争をしろ」と主張しているのでは断じてない。ここで言う「ケンカ」とは、「対立や軋轢を恐れず、知力や交渉力、情報力を駆使して他国や他者と競い合うこと」である。
日本人は争い事を好まない。領土を巡る問題も、先送りし続けてきた。だが、「刺激しないほうがいい」という判断を続けた結果、日中関係は改善しただろうか? 答えは明らかにNOだ。
相手の急所を突き、衝突が起きるギリギリのところまで緊張を高めた上で、譲歩を引き出す。それが正しい「ケンカ」のやり方だ。リスクを取って踏み込み、戦争を避けながら国益を守るのである。リスクから逃げると目先の懸案は回避できたように思えるが、必ず問題は大きくかつ複雑になって再び顕在化する。
ここでは国家間の関係について論じるが、個人に置き換えて考えた時も同様のことが言える。リスク回避の行動が、かえってリスクを増大させるのだ。日本側の「刺激したくない」という考えが中国のさらなる蛮行を招いた尖閣諸島を巡る問題は、その典型例だと言えよう。
※SAPIO2013年4月号