高度経済成長期からこの国では、公共事業談合がたびたび問題となり、時には政治家や業者の逮捕者を出す大事件となってきた。だが、この<震災瓦礫詐欺事件>の前ではそんな談合事件がかわいいものにさえ思えてくる。
官製談合では、まがりなりにも落札業者は事業を請け負い、国や自治体(発注者)に納品した。問題は、発注者が実際の工事費よりもはるかに高いカネを税金から支払い、それで浮いたカネ(裏金)が、特定政治家や役所に還流されていたことである。
それに比べて、震災瓦礫の広域処理を巡る税金の使途は呆れるほかない。国は“入札”を検討しただけで受注もしていない相手に総額336億円の拠出を決め、うち約176億円が実際に支払われた。そして、支払った側は「返還しなくていい」、受け取った側も「返す必要はない」と、開き直ったように説明しているのだ。
「カラ補助金」というべき問題の主体となったのは環境省である。
昨年3月、野田政権(当時)は、震災瓦礫の処理・焼却の協力を全国の自治体に求める広域処理の方針と、その財源に復興予算特別会計を充てることを決めた。協力に応じた自治体には産廃処理場の建設費、改修費が交付され、それとは別に瓦礫の受け入れ量に応じて1トンあたり3万~8万円の焼却費も支払われた。
瓦礫を焼却すれば燃料費などの実費がかかり、焼却炉の傷みも増える。だから被災地の復興の助けになるのであれば、復興予算を全国に配る正当性も認められよう。実際、復興予算交付を“餌”にしたことで、12都道府県(21団体)が瓦礫受け入れ検討を表明した。その意味でいえば「効果はあった」といえるかもしれない。
ところが、昨夏頃から事態は不可解な展開を見せる。被災地の“瓦礫量”が見積もりより少ないことが判明し、21団体中、14団体が受け入れ候補地から除外されたのだ。当然、それらの自治体は復興予算の交付はナシになると思いきや……、そうはならなかった。
環境省は最初からそれらの自治体に瓦礫が回らないことを見越していたかのように、都道府県に協力を呼びかける廃棄物対策課長名の通達(昨年3月)の中に、以下のような内容を入れていたからだ。
〈結果として災害廃棄物を受け入れることができなかった場合であっても、交付金の返還が生じるものではありません〉
これは「瓦礫を受け入れなくても交付金はあげます」という自治体への「カラ補助金」交付の密約ではないか。環境省はこう回答する。
「瓦礫の総量がわからない中で協力を求めた。自治体の協力を得るために仕方なかった」(同省廃棄物対策課)
そもそも復興予算は「被災地の復興に使うための財源」のはずだ。瓦礫を受け入れない自治体に使うのはおかしい、そう質しても、「返還は必要ないと考えています」と繰り返すばかり。
“どうしても復興予算を配りたかった”──そうとしか解釈できない態度なのだ。
※週刊ポスト2013年4月12日号