昨年12月5日、急性呼吸窮迫症候群で急逝した中村勘三郎さん(享年57)を偲び『十八代 勘三郎』(小学館刊)が発売された。
この単行本は、2005年に中村勘三郎という大名跡を継ぎ、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった勘三郎さんが、芝居への思いや交友録を語ったエッセイ『襲名十八代』(小学館刊)に加筆修正を施した追悼版。
例えば、ビートたけし(66才)とは、故・勝新太郎さん(享年65)と3人で酒を飲んだときのエピソードを披露。
<実はね、もう話していいと思うけど、その時なの、たけしさんが『座頭市』をやることが決まったのは。(中略)盛り上がってね。勝さんが座頭市(一)たけしさんが“座頭二”、僕が“座頭三”をやろうかだって。座頭市は水をかぶって火の中から子供を助ける、座頭二は油をかぶって火ダルマになる、これでどうだなんて。みんなもう笑いが止まらなかった>(以下、<>内はすべて『十八代 勘三郎』より)
テレビ番組でも数多く共演した笑福亭鶴瓶(61才)や、「愛しき女」たちとの秘話も満載。今回、勘三郎さんを家族とともに看取った大竹しのぶ(55才)に対しては、若き日の“恋煩い”エピソードも。
<『若きハイデルベルヒ』っていう舞台。僕が王子のハインリッヒで、彼女がケティという町の娘。(中略)それで、僕は好きになっちゃった。恋しちゃったんだね。というか、今考えると、ケティを好きになったんだね。よくデートしました>
そのせいで、当時つきあっていた女優とも別れてしまった。しかし、大竹のほうは、デートだというのに必ず妹を連れてくる。
<僕のことなんか全然好きじゃなかったんだね。(中略)こっちは、毎日舞台でチュ~してるんだから、好きになるよ、ねえ>
あっけらかんとそう語り、豪快に笑っていた。当時、この本の元となる連載「勘九郎かわら版」を担当していたスポーツニッポン新聞社・川田一美津さんは、こう振り返る。
「週1回の連載でしたが、話のネタを思いつくと、“こんな話でも、大丈夫かなぁ?”とすぐに電話をくださいました。米国アリゾナの別荘からも連絡があって取材に行ったんですが、“何かおみやげがないとね”と、スケジュールを押して、わざわざ水上スキーもしてみせてくれて。
自分がまっすぐだから、他人を疑うことを知らない。以前住んでいたご自宅に取材でお伺いしたときも、門のセキュリティーの暗証番号を“教えておくからさ”っておっしゃろうとして(苦笑)。こちらが慌てました」
※女性セブン2013年4月11日号