東京大学医学部附属病院(文京区)の総合受付からエスカレーターを上った中央診療棟3階。廊下にかかる「こだま分教室→」という看板の先に「東大こだま分教室」がある。ここは東京都が設置する都立北特別支援学校(北区)の分教室で、現在、白血病、心臓病など重い病気を抱えた小中高校生16名が在籍。都内に4つある都立の院内学級のひとつだ。
毎朝9時30分、生徒が病室から“登校”する。体調が悪い場合は教員が子供たちのベッドサイドに行って教えることもある。北特別支援学校の引間宗人統括校長が言う。
「入院中は人との触れ合いが少なくなり、通常は教育の機会もほとんどないのでぬくもりのある教室には大きな意義があります。子供にとって病室から出られることも大きな喜びです」
ここで学ぶのは原則として、東大病院に2週間以上入院し、北特別支援学校に転校した小学校から高校までの子供たちだ。北特別支援学校の教員10名、時間講師6名が教科を教える。入学式や遠足などの学校行事もある。治療を最優先して授業を行うが、教室は子供たちの笑顔と優しさであふれている。
「お腹が痛くなって泣いたり、急に吐いたりする子がいても、他の子はみんな嫌な顔ひとつせず『大丈夫?』と声をかけます。つらい経験をしている子供ばかりなので他の子供をいたわる気持ちが強いんです」(女性教員)
前日まで授業を受けていた子供が急に亡くなることもある。そんな日常に、先生たちも特別な思いで臨んでいる。
「退院して『授業は楽しかった。でも病院には戻ってきたくない』と感想を言った子供がいます。これが現実ですが、教員はつらい治療の中でも子供たちの勉強のモチベーションを上げるためいろんな指導法や教材を工夫しています。退院後、ここでの経験をプラスにして先の人生につながればと願っています」(北特別支援学校の木村泰子副校長)
※女性セブン2013年4月11日号