今年に入り活発化している嫌韓デモ。3月31日にも新大久保で行われ、商店街に怒号が響き渡っていた。しかしつい先日までは「韓国は竹島を返せ!」「朝鮮人を殺せ!」といったヘイトスピーチばかりが聞こえていたのに、この日はまるで違う言葉が、街を埋め尽くしていた。
「在特帰れ!」
「レイシスト帰れ!」
在日特権を許さない市民の会(以下「在特会」)などが協賛する、『特定アジア粉砕新大久保排害カーニバル!!』と称した排外デモ隊が新宿区内の大久保公園を出発し、職安通りのドン・キホーテ前に差し掛かった瞬間。沿道を埋めていた人たちから、このような声が次々とあがった。
車道を行進するデモ隊に向かい、歩道側からトラメガ(拡声器)で「レイシストは消えろ! 日本の恥!」と叫ぶ人、機動隊に静止されながらも中指を立てて挑発する人、極彩色のアフロヘアで扮装し、尻を向けながら嘲るグループ、そして静かに「仲良くしようぜ」「排外主義が保守を名乗るな」などのプラカードを掲げる人々……。
約200名のデモ隊に対し、実に3倍となる約600名が集まり、差別を反対するための意思表示をしていたのだ。彼らの多くがデモ隊とともに職安通りから大久保通り、そして解散場所である新宿駅近くの柏木公園まで移動し、「良いレイシストも悪いレイシストも家で寝てろ!」などのプラカードを掲げて抗議を続けていた。
「こんなに嬉しい日はない!」
「日本も捨てたものじゃない」
16時過ぎ、デモ隊メンバーが三々五々解散していく様子を眺めながら、抗議活動をしていた人たちからは喜びの声があがった。だが「ヘイトスピーチ・デモの排除を訴える署名運動」に参加していた30代の在日韓国人男性は、「まだまだ相手は手強い。バカにできない」と語った。
実はこの日は大阪の鶴橋でも同様の排外活動が、東京の日比谷でも在特会の友好団体による、朝鮮学校無償化を反対する運動が行われていた。参加者が分散した結果、200名程度で落ち着いたとも考えられる。
また3月14日に参議院議員会館で排外・人種侮蔑デモに抗議する集会が行われたことや、29日に宇都宮健児弁護士らが、在日外国人の安全確保の申し入れを警視庁にしたことなどから、「死ね」「殺せ」などの言葉はめっきり影をひそめていた。つまり「今までよりはおとなしめだった」という側面もあるのだ。
とはいえ前出在日韓国人男性は「もしまたデモがあるなら、100%抗議活動に参加する。彼らが完全にやめるまで、自分も絶対にやめない。そして今後は新大久保の商店の人たちとも話し合って続けていきたい。というのもデモが開催されるのは休日の午後で、店にとってはかきいれ時。商売の邪魔をしないことも、抗議活動を続けるうえで大事なことだから」とも語った。
文/朴順梨(フリーライター・元在日三世)