「大学新卒者が5人集まれば正規雇用は1人だけ。3人は非正規、1人は無職」と言われる韓国の就活事情は日本以上に深刻だ。韓国在住ライターの平井敏晴氏がリポートする。
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韓国の学年度が終わる2月中旬、かつて日本語講師として教壇に立っていた大学の学生から、こんな連絡が来た。
「昨日卒業式だったのですが、私の学年はほとんど来ていませんでした」
その理由は就職留年。ある者はすでに秋から留学中で、ある者は就活で失敗し、卒業すると不利になるからと在学期間を延長したのだそうだ。韓国学生の就活は日本以上に厳しい。
英語のほかに日本語か中国語の習得を、ほとんどの会社が求めている。誰もが憧れる財閥系企業ともなるとハードルは極めて高く、会社側は否定しているが、TOEICで990点満点中、800点以上でないと履歴書すら見てもらえないという。
全企業数に対してサムスン電子やLGエレクトロニクスといった財閥系企業が占める割合は、わずか1%に過ぎない。しかし、主要財閥10グループの総売り上げはGDPの約75%を占める。その入社試験の倍率は少なくとも数百倍で、トップのサムスン電子に至っては700倍とも報じられている。まさに針の穴をかい潜るようなもので、秀才が集中するソウル大学ですら、就職率は50%に満たない。
韓国では、大学4年生の下半期が始まる9月に履歴書を送り、採用が決まるのは卒業間際だ。1回で就職が決まるケースは稀で、就活が何年も続く。途中、語学留学する者も少なくない。
大学に入ってから就職を意識する日本と違って、韓国では早いうちから就職を念頭に教育される。小学生で外国語の習得に勤しみ海外研修にも参加。選ばれし者は外国語高校で学び、さらに大学入学後には英語+第2外国語のスキルアップだけでなく、目指す企業が個別に入社条件として指定する資格試験の合格を目指して猛勉強を続ける。
書類審査では大学の成績も大きく考慮されることから、期末試験での激闘と、成績に不満がある者の教授への異議申し立ては当然のこと。筆者も成績を上げろと学生に脅されたことがある。
「苦労して大学に入っても勉強ばかりで楽しくないし、何のための学生生活なのかわからない」
やつれた姿で学生が愚痴をこぼすことは多々あった。その熾烈な競争を勝ち抜いた者だけに、財閥系企業への挑戦が許されるのだ。
※SAPIO2013年4月号