ビジネス

瀧本哲史氏「マッキンゼー、凄い人気だけどクールではない」

東大・マッキンゼー卒の京大客員准教授「アベノミクス」分析

 京都大学が発表した教養課程の「英語化」に見られるように、英語の重要性が高まっている。これらを「自然な流れ」と語るのは、京大で教鞭をとる瀧本哲史氏だ。『僕は君たちに武器を配りたい』をはじめとする“武器シリーズ”がベストセラーとなり、京大の講義も人気を博す瀧本氏は、マッキンゼー出身のエンジェル投資家という顔も持つ。京大で「起業論」も教える瀧本氏に、起業の現状と、今後の日本経済を聞いた。

 * * *
――先生の「起業論」の授業は、大変な人気だとお聞きします。実際、京大を出て起業する人は、どれくらいいるんでしょうか。

瀧本:そんなに多くはないですね。僕はそもそも、大学を出てすぐの起業に、あまり賛成ではないんです。本にも書きましたが、どこか大企業にしばらくいて、そこで会社や業界の弱点を探して、それを元に起業するのが一番成功するパターンです。就職できないから起業するというのも間違っています。起業というのは、実力のある人がするのであって、追い詰められた人がするものではない。

 たとえばネットメディアで、資本力はそれほどないのに成功しているのは「J-CAST」です。J-CASTは『AERA』の元編集長が立ち上げたメディアですよね。よくわかっている人が起業したほうが成功する確率は高いのです。

――世界的にそうなのですか?

瀧本:それが世界の王道です。インテルだってフェイスブックだって、グーグルだって、同業他社を辞めた人が創業にかかわっています。アップルが成功したのも、インテルでマーケティング部長を勤めたマイク・マークラの功績が大きい。学生が会社を大きくしたというストーリーは喧伝されがちですが、それだけで会社は大きくならないのです。

――起業するのに必要なことってなんでしょうか。

瀧本:能力は言うまでもありませんが、まとまったお金も必要になります。が、日本でサラリーマンをしていると、住宅と教育にお金がかかりすぎて、相応の額のお金が手に入らない。そういう意味で、リクルートには期待しています。今年株式公開(IPO)したら、億単位を手にする人が出るでしょう。彼らがどう動くのか。グリーもストックオプションの行使タイミングが近いので、新たな事業が生まれるきっかけになるかもしれません。

 夫婦でリスクヘッジするのもありだと思います。旦那さんが堅い仕事についていて、奥さんが起業する。その逆もしかりです。私の投資先にもこういうパターンは結構います。

――最近は、マッキンゼー出身の起業家の活躍が目立ちます。先生もマッキンゼーご出身ですが、強さの秘訣は何でしょうか。

瀧本:マッキンゼーは、日本では特殊な人気企業として語られがちですが、海外においてはエスタブリッシュメント的な会社です。日本で言う、大手商社みたいな存在ですね。人気があってみんなが入りたがるけど、必ずしもクールではないよねと。

 いま日本では、卒業生がメディアで目につくようになっていますが、それはピークアウトの兆候です。産業として、あるいは会社として、成熟期に入っているということですね。コンサル業界も競争が激しいですからね。ただ、出身者を「アラムナイ=卒業生」と呼ぶ言葉のとおり、教育機関、ネットワーキングの場として優れていたのは確かですね。

――最後に、アベノミクスへの期待が高まっていますが、景気は上がっていくのでしょうか。

瀧本:景気について言えば、正しい金融政策をすれば景気が良くなるのは当たり前です。それ以上でもそれ以下でもない。ただ、正しい金融政策が行われるというのが、日本においては、難しかった。今後も全く予断を許さない。

 日本のメディアはとかく「こうなる」と断言しますが、物事は単純ではありません。わかりやすい答えを求める人が多いから、メディアはそういう人たち向けに書いているのであって、本当のことを書いていない。売れると思っていることを書いているだけです。たとえば「The Economist」などは、日本とは全然違う報道をします。海外の違う視点の報道と読み比べできるのも、英語ができる大きな利点の一つですね(笑)。

【たきもと・てつふみ】
東京大学法学部卒。同大学院法学政治学研究科助手、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て独立。現在は、エンジェル投資家、京都大学客員准教授。NPO法人全日本ディベート連盟代表理事、星海社新書軍事顧問などもつとめる。著書に『僕は君たちに武器を配りたい』『武器としての決断思考』『武器としての交渉思考』

関連記事

トピックス

不倫報道のあった永野芽郁
《“イケメン俳優が集まるバー”目撃談》田中圭と永野芽郁が酒席で見せた“2人の信頼関係”「酔った2人がじゃれ合いながらバーの玄関を開けて」
NEWSポストセブン
六代目体制は20年を迎え、七代目への関心も高まる。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
山口組がナンバー2の「若頭」を電撃交代で「七代目体制」に波乱 司忍組長から続く「弘道会出身者が枢要ポスト占める状況」への不満にどう対応するか
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん、母・佳代さんのエッセイ本を絶賛「お母さんと同じように本を出したい」と自身の作家デビューに意欲を燃やす 
女性セブン
日本館で来場者を迎えるイベントに出席した藤原紀香(時事通信フォト)
《雅子さまを迎えたコンサバなパンツ姿》藤原紀香の万博ファッションは「正統派で完璧すぎる」「あっぱれ。そのまま突き抜けて」とファッションディレクター解説
NEWSポストセブン
国民民主党の平岩征樹衆院議員の不倫が発覚。玉木代表よりも重い“無期限の党員資格停止”に(左・HPより、右・時事通信フォト)
【偽名不倫騒動】下半身スキャンダル相次ぐ国民民主党「フランクで好感を持たれている」新人議員の不倫 即座に玉木代表よりも重い“無期限の党員資格停止”になった理由は
NEWSポストセブン
ライブ配信中に、東京都・高田馬場の路上で刺され亡くなった佐藤愛里さん(22)。事件前後に流れ続けた映像は、犯行の生々しい一幕をとらえていた(友人提供)
《22歳女性ライバー最上あいさん刺殺》「葬式もお別れ会もなく…」友人が語る“事件後の悲劇”「イベントさえなければ、まだ生きていたのかな」
NEWSポストセブン
4月24日発売の『週刊文春』で、“二股交際疑惑”を報じられた女優・永野芽郁
永野芽郁、4年前にインスタ投稿していた「田中圭からもらった黄色い花」の写真…関係者が肝を冷やしていた「近すぎる関係」
NEWSポストセブン
東京高等裁判所
「死刑判決前は食事が喉を通らず」「暴力団員の裁判は誠に恐い」 “冷静沈着”な裁判官の“リアルすぎるお悩み”を告白《知られざる法廷の裏側》
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《インスタで娘の誕生報告》大谷翔平、過熱するメディアの取材攻勢に待ったをかけるセルフプロデュース力 心理士が指摘する「画像優位性効果」と「3Bの法則」
NEWSポストセブン
永野芽郁
《永野芽郁、田中圭とテキーラの夜》「隣に座って親しげに耳打ち」目撃されていた都内バーでの「仲間飲み」、懸念されていた「近すぎる距離感」
NEWSポストセブン
18年間ワキ毛を生やし続けるグラドル・しーちゃん
「女性のムダ毛処理って必要ですか?」18年間ワキ毛を生やし続けるグラドル・しーちゃん(40)が語った“剃らない選択”のきっかけ
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《田中圭に永野芽郁との不倫報道》元タレント妻は失望…“自宅に他の女性を連れ込まれる”衝撃「もっとモテたい、遊びたい」と語った結婚エピソード
NEWSポストセブン