中国では習近平指導部が発足後、習近平国家主席による腐敗撲滅運動が展開されるなか、米国に留学中の最高幹部の子弟が学業半ばで続々と帰国している。汚職や党規律違反で失脚した薄熙来・元重慶市党委書記の息子がハーバード大学に留学し、その学費や生活費の出所が不明だったことから、市民から党政府高官に疑惑が向けられたためで、帰国した子女のなかには習国家主席の一人娘、習明沢さんも含まれている。
香港紙「明報」などによると、中国共産党員の規律違反を調査する党中央紀律検査委員会は2月下旬、総会を開き、同委トップの王岐山書記は、「配偶者とその子女が国外に移住している国家公務員の管理と監督を強める」と指摘し、海外留学の子女らや国外在住の親族の調査を強化することを明らかにした。
この総会には、習主席も出席し、「虎だろうが、ハエだろうが、腐敗幹部はすべて取り締まる」と述べて、役職の上下に関係なく、腐敗幹部を徹底的に取り締まることを宣言した。
中国では子弟や妻、親族を海外に居住させ、海外の市民権をとらせて、汚職などで得た不正な資金を海外の銀行口座に振り込むなどして資産を海外に移行させる手口が横行し、国家資産の海外流出が問題化している。
しかし、かつての最高幹部であるトウ小平氏や李鵬元首相、江沢民・元主席、朱鎔基元首相ら党最高幹部の子弟はいずれも米国の大学に留学していることが分かっており、習近平主席ら現役の最高幹部の子弟も海外留学していた。
このため、習近平主席は「示しがつかない」と思ったのか、自身が党総書記に就任する昨年夏前には娘の習明沢さんを帰国させたと伝えられる。
この動きに呼応するように、李克強新首相の娘や李源潮・国家副主席の息子、馬凱・国務委員(副首相級)の息子ら「最高幹部の子弟の帰国ラッシュが起きている」と同紙は伝えている。
とはいえ、ハーバード大学のドリュー・フォースト学長は米紙ウォールストリート・ジャーナルに対して、「ハーバード大学で最も多い留学生は中国人」と明らかにしており、帰国した子女はほんの一握りとみられる。
大半の幹部は子女を帰国させていない模様だ。近い将来、王岐山書記の言うように、腐敗による取り調べの対象になる可能性がある。そのときのために、習主席ら最高幹部はいち早く娘らを帰国させたとみられる。ネット上では「習主席ら最高幹部も子弟を米国に留学させていたくせに、自分たちが腐敗の捜査を始める前に、さっさと子女を帰国させてしまうのは、自己保身に他ならず、あまりにも身勝手だ」などとの批判が出ている。